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Bauhaus


 1978年に結成された、英国のゴス/ポジティヴ・パンクを代表する伝説的バンド。ロンドンを拠点に活動を展開し、79年にインディのスモール・ワンダーからシングル・デビュー。80年、4AD からの1stアルバムで人気を確立、翌年からはベガーズ・バンケットに移籍して、計4枚のオリジナル・アルバムを発表しましたが、メンバー間の確執のため 83年の日本公演を最後にバンドは解散。98年に一時的にライヴで復活するも、それが正真正銘の最後、と思いきや、05年に再結成を果たし、08年にはオリジナル・メンバーで新作をリリースというサプライズ。

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1980年
1st アルバム
推薦盤
In The Flat Field

 元祖かどうかは分からないけど、ゴシック・ロックというジャンルを象徴するバウハウスのデビュー作。猿を見るといかにヒトが哺乳類から進化したかわかるように、このアルバムを聴くといかに「パンク」から「ゴス」が派生していったか解る気がします。旋律という枠からはみ出して騒ぎまくるピーター・マーフィーのボーカルといい、自由奔放な楽器隊の演奏といい、これは確かにパンク・ムーヴメント以降の産物。特にダニエル・アッシュのギターが出す音は、この楽器が持っている無限の可能性を感じさせます。「ギュルギュル」とか「ジャリーン」とか「ピーピー」とか、一体どうやって鳴らしているんでしょうかね。すっごいテキトーにプレイしているようで、きっと計算ずくなんでしょう。うねりにうねるベースや、地面に叩きつけるようなドラムの質感も独特のもの。楽曲は高速8ビートチューンから廃墟でまったりするようなスローテンポの曲まで様々ですが、共通しているのはただ暗いだけでなく、聴く者を突き放すようなクールネスがあること。ゴシック云々言う前にこれはパンク・ロックとしても極上の一品だと思います。でもバウハウスの全4作品の中では、ある意味このアルバムが最も異色だったりするんですね。
注目曲 : #1 「 Dark Entries 」
 沈み込むような旋律のリフと、ピーター・マーフィーのニヒルなボーカルのコンビネーションがカッコイイ。ダケンティ!

Mask

 ダニエル・アッシュが手がけたジャケ絵が目を引く2ndアルバム。ゴスならではの美学を突き詰めた前作とは打って変わって、本作では色々な意味でポップに、そしてカラフルになりました。レゲエ/ダブ、ファンク、ディスコ音楽などのエッセンスを意識的に取り入れ、ゴシック・ロックの枠に収まらない幅広いサウンドを展開しています。一部の曲では暗黒面を守りつつも、全体としては親しみやすくお洒落にイメージチェンジ。ここではパンク的な荒々しさやスピード感は後退した代わりに、軽やかでダンサブルなリズムが印象的です。例の不思議ギタープレイは健在で、ベースもメロディアスに自己主張。統一感や緊張感では前作に一歩譲りますが、これはこれで豊富なアイディアを純粋に楽しめば良いと思います。バウハウスの最高傑作については、ファンの間でも 1st 派と 2nd 派に大きく分かれるようですね。


1981年
2nd アルバム
注目曲 : #6 「 Kick In The Eye 」
 陽性メロディーのディスコ・チューン。とことん繰り返されるベースラインが好き。



1982年
2nd アルバム
The Sky's Gone Out

 ブライアン・イーノのカヴァー曲で幕を開ける 3rd アルバム。ジャケが黒に戻ったので王道ゴシック・ロックで攻めているのかというと、とんでもない。ゴスどころかロックの域に収まるかどうかすらも怪しい、ちょっと壊れ始めたバウハウス。ダニエルのギタープレイや特有の暗さはバウハウスのそれに他ならないし、前作でみせたディスコやレゲエ的なアプローチも無駄にはなっていませんが、全体としてはこれまで以上に実験的な作風となっています。エスニックな旋律が飛び出せば、次は神秘的な静寂がやってくる。ドラムレスでじっくり叙情的に歌い上げたと思ったら、突然妙にハイになったりもする。ポップな曲がある一方で、シリアスでドラマチックな盛り上がりもみせる。一枚の CD の中でどれだけ振り回すんだ?!ってな勢いで、これは聴いてて困惑しました。どうもバラバラで統一感には欠けています。きっと彼らの頭には「適切に」とか「満遍なく」といった言葉は存在しないんですね。思いついたことを何でもやってしまう。ある意味でニューウェイヴの究極の形を提示しているのかもしれません。しかしバンドの求心力が低下していたのも事実だったようで、そのことが作品に反映されているとも考えられます。楽曲の質が落ちている訳ではないので、聴き手によって解釈が分かれるアルバムでしょう。
注目曲 : #11 「 Who Killed Mr. Moonlight 」
 後に CD に追加収録されたデヴィッド・ボウイのカヴァー。シングル曲。なんかコレが一番好きでした。原曲が良いですからね。

Burning From The Inside

 ラスト作となった 4th アルバム。ピーター・マーフィーが病気で離脱している間に、残りの3人がレコーディングを進めてしまって、ピーターが回復して戻ってきた時には、もう殆ど完成しちゃったよ?すまんねピーター、といういわく付きの作品。収録曲にはギターのダニエル・アッシュとベースのデイヴィッド・J がボーカルを握る曲も多く、音楽性の違いなのか、彼らにとってピーター・マーフィーが必要でなかったことが窺え、本作リリース当時はバンドも解散秒読み段階だったとか。ひび割れたアートワークも示唆的(どうだか)。特にアルバムの後半を聴くと、もうこの時点で Love And Rockets は始まってるな〜と思わされます。全体としては、アコギやピアノを用いたアンプラグドな時間帯が大半を占める、夜想曲風の物静かなアルバム。一部ドタバタと狂気じみた曲もありますが、例のジャリジャリギターは出番控えめで、もはや「ゴス」とか「ポジパン」とかいう言葉を持ち出すことが無意味に思える、それ程までに様変わりしてしまったバウハウス。それでもアルバム中盤の寂寥感を湛えた美しいメロディーはまた別の魅力であり、最近では一番再生する頻度が高かったり。


1983年
4th アルバム
注目曲 : #4 「 King Volcano 」
 ダウナーな気分へと誘う螺旋状の鍵盤メロ、そしてどこか終末的なコーラス。