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Carcass


 「リバプールの残虐王」との異名もとる英国のグラインドコア/デスメタル系バンド。結成は1985年で、1988年にイヤーエイクから 『 Reek of Putrefaction 』 でデビュー。後に Arch Enemy を結成する Michael Amott が加入した 3rd アルバム以降はメロディアスで正統派ヘヴィメタルの要素を強めていき、4th 『 Heartwork 』 はメロディック・デスメタルの先駆けとして評価されるようになりました。ボーカルは当初 Bill Steer (元 Napalm Death )と Jeff Walker の2人でしたが、『 Heartwork 』 からはジェフのみが担当。1995年、5th アルバムのレコーディング後に Bill が脱退、バンドは解散しましたが、2007年に再結成。なおドラムの座には健康上の理由で参加できなかったオリジナルメンバーの Ken Owen に代わって Arch Enemy の Daniel Erlandsson がついています。
 彼らの独自性はそのサウンドのみならず、難解な医学用語が頻出する歌詞やグロテスクなアートワークも一貫したコンセプトであり、トイズ・ファクトリーから発売されている日本盤にはご丁寧に悪趣味な邦題が付けられています。例えば、1st アルバムの邦題は 『腐乱屍臭』、3rd は 『屍体愛好癖』・・・アホですね! 管理人はこのバンドは昔からボチボチ愛聴していましたが、ラウドパーク08で生カーカスを拝んでから、体の中で何かのスイッチが入り、一気にヘヴィロテのバンドになってしまいました(笑)

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1988年
1st アルバム
Reek Of Putrefaction

 Napalm Death のギタリストであるビル・スティアーとボーカル兼ベーシストのジェフ・ウォーカー、ドラムのケン・オーウェンの3人によるカーカスの 1st 。 骨を砕き、肉をすり潰し、ブラストビートでぐちゃぐちゃになるまで畳み掛けるミンチサウンドは、 「ゴアグラインド」 なる音楽ジャンルを樹立した記念碑的作品です。 歌詞も生理的嫌悪感を催すグロテスクな人体・医学用語で埋め尽くすといった徹底ぶり。素晴らしい。 どの曲も1〜2分程度で、ビルもジェフもひたすらゲロっているようなツインボーカル体制。 その上、プロダクションが劣悪でサウンドが酷く篭っているので、全曲同じような地鳴りのごとき醜い音の塊ですが、 それがまたイイとおっしゃるコアなファンも多く、今でもアングラ界で多くのフォロワーを生み出すバイブルなのであります。 管理人的には・・・気分にもよりますね。
注目曲 : #8 「 Festerday 」
 22秒の最短トラック。ナパーム・デスっぽいグラインドコアです。

Symphonies Of Sickness

 ビルがナパーム・デスを脱退してカーカスに専念しての 2nd 。 前作と比べて音質が改善され、ブラストビートを刻むドラム音の輪郭も幾分クッキリ、 またメロディアスで印象的なギターフレーズもチラホラと耳に付くようになり、 マイケル・アモット加入前からバンドの音楽性が微妙に推移していたことが分かります。 曲数も12曲へと半減、その代わり一曲一曲は3〜6分台へと長尺になり、リフの展開や緩急を意識した曲作りが目立つようになりました。 ビルのゴヴォゴヴォ下水道声とジェフのゲロゲロうがい声の二つのデス声のコントラストも高まってきて、個人的にもかなり好みです。 とはいえ、1st に比べたら幾分耳馴染みがマシになっただけで、グロさ満点のグラインドコア/デスメタルであることには変わりありません。 今作も素敵な肉片コラージュ・ジャケで食欲増進! さあ肉を食べるぞー。


1989年
2nd アルバム
注目曲 : #1 「 Reek Of Putrefaction 」
 恐怖のイントロ部で飛び出す 「アーイ」 ってゲップ声が超イイ(笑) この時点でこのアルバムは勝負ついたな。オレはこの 「アーイ」 のために3000円は払います。



1991年
3rd アルバム
Necroticism - Descanting The Insalubrious

 後に Arch Enemy を結成するマイケル・アモットがバンドに加わりツインギター体制となった 3rd アルバム。 初期のグラインドっぽさをギリギリに守りながら、次作ほどではないにせよ随所にアモットの叙情的なギターフレーズが織り交ぜられ、 正統ヘヴィメタルへの接近が窺える作品です。 でも、このアルバムは決して作風の過渡的な意義だけで終わらず、一枚のアルバムとして完成度も高く、 ある意味で最もカーカスというバンドの魅力を満遍なく詰め込んだアルバムと言えるかもしれません。 比重が増したジェフの邪気溢れるボーカルや、一筋縄には行かない凝ったドラミングもさることながら、 難解な化学式のようなギターリフの複雑奇怪な旋律がなんとも印象的。 まるで人体ジグソーパズルを組み立てるかのような、そんなイメージ。
注目曲 : #2 「 Corporal Jigsore Quandray 」
  こちらもカーカスを代表する人気曲。リズミカルなドラミングとギターリフが超ハマリます。

Heartwork

 元祖メロデスとして称えられる伝説の一枚、4th アルバム。アモットのギターが一段とメロディアスになり、 ソロパートを擁した楽曲群は正統派ヘヴィメタルの音楽性とほぼ同化。以前のグラインド時代には薄かった音楽としての整合性が備わり、 かなり聴き易くなりました。タイトル曲 #4 「 Heartwork 」 で飛び出す流麗なギターソロは何とも感動的で、 肉骨粉ベースの硫酸シチューに溶け込む美しいハーモニー! おぉ、たまらん。 あとこのアルバムはスラッシーな2ビートのパートが確実に増えていて、 #2 「 Carnal Forge 」 や #6 「 Arbeit Macht Fleisch 」 は白骨化した屍が暴れ回るがごとき熾烈な疾走ナンバー。 アホみたいにヘドバンするのが楽しい楽しい(笑) チンチンと音を鳴らしてスピード感を強調するライドの使い方も巧み。 速さだけでなく、#1 「 Buried Dreams 」 や #3 「 No Love Lost 」 のミドルテンポ曲の充実度もまた強力で、 リフのメロディーも特有の美学が貫かれていて、まさにこのアルバムを名盤たらしめる要因ではないかと。 ジェフとビルのツイン・デス・ボイスのコントラストや、グチャグチャな重低音が好きだった古参のファンの間で物議を醸したそうですが、 ジェフ一本に絞ったボーカルもサウンドにマッチしているし、順当な変化ではないかと感じます。


1993年
4th アルバム
大推薦盤
注目曲 : #1 「 Buried Dreams 」
 デンジャラスな匂い立ち込めるイントロからして鬼カッコイイです。後半のギターソロもたまらんね。



1996年
5th アルバム
Swansong

 活動停止時期にリリースされたスタジオ最終作。ちなみにタイトルの『スワン・ソング』は、欧米では一般に「遺作」を意味する言葉らしい。さてこのアルバム、ジェフがいつものデス・ボイスを常用している点を除いては、デスメタル/グラインドコア色はすっかり薄まり、オーソドックスなハードロック/ヘヴィメタルと呼ぶに相応しいサウンドになりました。何はともあれ、全然グロテスクな感じがしませんね。スピードもかなり落ちていて、ブラストパートは姿を消し、ミッドテンポ中心に進行。曲展開もコンパクト。ギターサウンドも今までとは違った感触で、後期 Soilwork にも通ずる変わり様です。やはりギターのアモットが脱退したからだと思いますが、「 Heartwork 」 のような美しいソロパートが聴けないのは残念といえば残念。それでも新境地開拓と言える内容でからは、バンドが最後まで前に向かって歩き続けていたことが窺えます。
注目曲 : #10 「 Rock The Vote 」
 イントロからして「あれっ?どうしたカーカス?」って思う。哀愁を帯びたギターリフがこのアルバムでは異色。ツインギターの絡みとかホラ、これはアイアン・メイデンだろ。