N O M O S  A L P H A     Map   Genre   Index   Label   People   Column   Link   Info

Cradle Of Filth


 1991年に結成されたイギリスを代表するブラックメタルバンド。 悪魔的思想・吸血鬼伝説などをコンセプトとした世界観に、キーボードやコーラスをふんだんに盛り込んだシンフォニックなアレンジ、 そして変幻自在なダニ・フィルス ( Dani Filth ) のボーカルが魅力です。 初期はヨーロッパのアンダーグラウンド限定の人気でしたが、2004年にはレーベルを Roadrunner に移してアメリカでの人気も拡大。 今やブラックメタル界では商業的に最も成功しているバンドの一つになりました。その反面彼らをブラックメタルと認めない硬派なファンも多いとか。

−−−−−−−−−−−−−−−



2000年
4th アルバム
推薦盤
Midian

 バンドの最高傑作の呼び声も高い 4th アルバムは、圧倒的なスケールとクオリティで展開される一大ブラック・エンターテイメント絵巻。 オーケストレーションとクワイヤをより一段と装飾華美に炸裂しつつ、 悪夢のメリーゴーランドのごとく回転するキーボード、血まみれのパイプオルガン、こっくりさん風(?)のおまじない等、 表情豊かなアレンジを吹き込まれた楽曲群は、暗黒の遊園地さながら娯楽性に富みまくった印象。 前作まで気になっていたドラムやギターの音圧の軽薄さが改善されたのも嬉しい限りで、 高音低音使い分けるダニ様の絶叫とともに悲壮感を漂わせながらドラマチックに疾走する様は、 大英帝国産ブラック・メタルの最右翼の名に恥じぬ堂々たる風格です。 その一方で、一部のファンからは 「売れ線に走った」 との反発もあるようで、 このアルバムが初期のピュア・ブラックと中期以降のコマーシャル・ブラックの分水嶺ともいえそうですが、 なんせ個人的には本作こそがブラックメタルの初体験アルバムでして、それだけに愛着は他の作品の比じゃないんすよ。 こんな楽しいブラックから入るなんて、罪ですな。
注目曲 : #2 「 Cthulhu Dawn 」
 イントロに続く実質リードトラック。 ベタベタなオルガン旋律とともに起伏激しく疾走する様はまさに悪夢のジェットコースター。ダニ様の歌はじめのリズムチェンジがイイ。

Damnation And A Day

 メジャーのソニーから発売され、米ビルボードでも170位にチャートインを果たしアメリカ進出の足がかりともなった 5th アルバム。 聖書中の堕天使ルシファーをモチーフとして、ブダペストの40人編成オーケストラと32人のコーラス隊を従えて制作された本作は、 全17曲、4部構成、収録時間76分の超大作。 派手派手シンフォ路線を順当に押し進めた作風は、これまでのバンドの集大成とも言える内容で、 よりダイナミズムを増したメタル・ギターはパワフルにうなりを上げつつ、 かたやメロディアスで扇情的なフレーズも随所に美味しく散りばめられていて、 76分というボリュームがお腹一杯に思えてしまうほどのトータル的な充実度は、さすがの一言。(いや、やっぱりちょっと長いかな/苦笑)  前作のエンターテイメント性の高さと比べ、このアルバムは映画音楽とでも言うべき、次々と情景が移り変わる展開力が売りですかね。


2003年
5th アルバム
注目曲 : #3 「 Hurt And Virtue 」
 哀愁メロで明快に疾走するキラートラック。 こういう曲をチョイスするあたり、あ〜やっぱりオレはメロデスが好きなんだな〜って思う。



2004年
6th アルバム
Nymphetamine

 ロードランナーへの移籍第一弾となる 6th アルバム。壮大なゴージャス感を追及していた前作までと比べ、 このアルバムではシンフォニックなアレンジをやや抑え、ギターサウンドそれ自体の魅力で勝負したような硬派な作風にシフトチェンジ。 お決まりの冒頭イントロに次ぐ #2 「 Gilded Cunt 」 は、のっけからゴリゴリのスラッシュリフが炸裂でブッ飛ばされます。 ここまで贅肉を削ぎ落として生ギターの迫力で攻める疾走チューンは今まで無かったかも。 それでもアルバム全体としては要所でストリングスを用いて、いつも通りな暗黒世界を描きつつ、ピアノ音やコーラスを的確に織り交ぜて、 クレイドルならではの劇的なドラマ性がイイ感じで守られているのが嬉しいところ。 楽曲のクオリティも軒並み高く、特にタイトル曲の #6 「 Nymphetamine (Overdose) 」 は白眉の出来。 従来のファンのツボも抑えながら、マンネリを回避するための新機軸が無理なく稼動した、なかなかの快作です。
注目曲 : #9 「 Coffin Fodder 」
 途中何回か飛び出す哀愁のメロディアスギターがイイ。

 元 Theatre of Tragedy で現在は Leaves' Eyes に所属するゴシック界の歌姫、 リヴ・クリスティン ( Liv Kristine ) をゲストに迎えたタイトル曲 #6 「 Nymphetamine 」 。 彼女の可憐な歌声をフィーチャーしたメロディアスパートを挟み込んだ9分強の大曲で、 2005年のグラミー賞で 「ベスト・メタル・パフォーマンス」 部門にノミネートされました。 この PV はリヴ・クリスティンが登場する中盤のみを抜粋したヴァージョン。 分かりやすい 「美女と野獣」 方式のデュエットで、ゴシックファンには激オススメ。