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Danielle Dax


 The Lemon Kittens なるポストパンク・バンドに在籍していた女性ボーカル、ダニエル・ダックスによるソロ・プロジェクト。当時の UK ゴス・シーンの聖地クラブ 「 Batcave 」 にも出入りしていたため、ポジパン人脈で語られることもありますが、音楽的にはいわゆるポジパンではなく、ポストパンクをベースに民族音楽を融合した実験前衛ポップといったところ。スージー・スーやストロベリー・スウィッチブレイドにも匹敵する派手なメイクや衣装も彼女の魅力であり、UK ニュー・ウェイブ界を(視覚的にも)彩った重要女性アーティストとしては外せない存在です。

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1988年
4th アルバム
推薦盤
Dark Adapted Eye

 米国のメジャー・レーベル移籍後にリリースされた作品。収録内容は 3rd アルバム 『 Inky Bloaters 』 から一曲を除く全曲、そして 2nd 、1st からの曲も含め、この他に新曲も多数収録した全19曲のコンピレーション盤・・・でいいのかな? 3rd アルバムのボートラ入り限定盤と捉えるには新曲が多すぎるし、全くの新しいオリジナル・アルバムと言うには再録曲が多すぎるという、ポジションが微妙〜なアルバム。まあここでは 「 4th 」 で押しちゃいます。さて音ですが、リードトラックの 「 Cat House 」 は8ビートで疾走するストレートなロックチューンですが、その後は・・・打ち込みビートとエレクトロニクスが支配するクラブチューン、エスニックなリズムやイスラム旋律が飛び交う民族音楽、アコースティックな3拍子ワルツ、カントリー調あり、グラムっぽい曲あり・・・・・とまあ、枚挙に暇のない究極のアヴァンギャルド闇鍋ミュージック。ダニエル・ダックスのボーカルも曲によって声の表情を使い分け。それでも悪い意味でまとまりに欠けることもなく、全編に渡って彼女特有の陽性のポップネスが貫かれているんですね。その上歌メロもキャッチー。まさに「ダニエル・ダックス」という一つの音楽ジャンルが完成しているかのようで、これはユニークで楽しめました。
注目曲 : #2 「 Big Hollow Man 」
 ダニエル・ダックスで人気のある曲の一つです。リズムマシンによる反復ビートがクセになるクラブ対応チューン。メロも耳に残るなー。

 元は 2nd アルバムの曲ですが、『 Dark Adapted Eye 』 にも収録された曲。非西欧的なリズムトラックが印象的な(似非)民族音楽です。コレ何かに似てるな〜と思ったら、アレだ、PIL の 「 Flowers Of Romance 」 の女性版ってところか?



1990年
5th アルバム
Blast The Human Flower

 スタジオ最終作 5th 。ポジパンの巣窟クラブ Batcave の常連だったダニエル・ダックスも、 「メジャーに移籍して毒気を抜かれてしまった」 としばしば古参のファンを嘆かせたようで、確かにこのアルバム聴くと普通っぽくなっちゃった感は否めません。 今作でも独特のメロディーセンスや民族エキスとの融合っぷりは健在で、 ダニエル・ダックスらしさみたいなものは十分守られてはいるのですが、壷から飛び出した蛇を操るインチキまじない師のような、胡散臭い摩訶不思議オーラはすっかり薄れてしまい、 良くも悪くも都会的に垢抜けた個性派エスニック・ポップといった佇まい。アルバム後半は退屈な曲が目立つし、サウンドもなんだかスカスカ軽くなった印象。 まあそうは言いつつも、#1 「 The ID Parade 」 のミラクルポップなダックス節は脳内リピート必至だし、彼女のポップ面が好きなら手にとる価値は十分あります。
注目曲 : #1 「 The ID Parade 」
 前作リードトラック 「 Cathouse 」 直系の疾走ロケンローポップ。「ラ〜ラ〜ラララララ〜」 のフレーズは思わず口ずさんじゃいます。