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Delerium


 Front Line Assembly のフロントマン、ビル・リーブ ( Bill Leeb ) によるサイド・プロジェクト。FLA とほぼ同時期に活動を始めており、初期は不気味系暗黒インストゥルメンタルだったようですが、途中から女声ボーカルをフィーチャーしたワールドビートに路線変更。そんな中、1999年のシングル曲 「 Silence 」 は世界中で大ヒットし、この曲に起用されたカナダの女性シンガー Sarah McLachlan もついでに大ブレイクしてしまいました。FLA で攻撃インダストリアルを継続する傍ら、近年の Delerium はより大衆受けを狙った癒し系エレクトロ・ポップに走っています。

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1989年
2nd アルバム
Morpheus

 デレリウムといえば、やはり近年の癒し系女声ボーカルをフィーチャーした清涼エレクトロポップですが、 好奇心から適当に初期の作品に手を出してみました。ちと怖いジャケ絵のイメージ通り、これは地下ダンジョンの BGM です。 ウヒ、期待通りだ! たいまつ片手に石壁に刻まれた呪文を解読して扉を開き、 恐る恐る次の階層に足を踏み入れる、でも敵はまだ出て来ない・・・そんな世界観。 どの曲もスローテンポな EBM ないしはアンビエント調で、 ボーカルが存在しない代わりに「ザワザワ」だとか「ワォーン」てな不気味サンプリングが散りばめられています。 デレリウムもこの時点では FLA とそう大差ない音楽をやっていたのでした。 さすがに音楽としての華やかさには欠けるし音質もチープですが、カルト音楽好き人間は試してみる価値あり。 オレは結構評価してます、このアルバム。
注目曲 : #4 「 Faith 」
 初期 Laibach を彷彿とさせる低速打撃音、残響するシンセ音、そしてゴシカルな空気といった取り合わせ。インダス好きのツボを確実についてきます。

Syrophenikan

 初期デレリウムの3枚目。まあ、同じく暗黒系インスト・アルバムですが、 前作には無かった微妙にエスニックな香りや民族音楽を思わせるパーカッシヴなリズムトラックが強化され、 その意味では近年のデレリウムの音像に一歩近づきました。 今回は古代文明遺跡の地下散策の BGM 。ってか、そんなのばっかかい!  前作がひたすら不気味さを煽るものだったのに対し、ここでは神秘や秘境とでもいうべき芸術性が根付き始めている印象で、 スカスカだった音質が幾らか改善されたこともあり、その音楽性は確実に進歩を遂げています。 でも・・・やっぱりインストなもんで、どうしても右耳から左耳なんですよねえ。 リズムがチャカポコ言うだけの地味過ぎトラックも多く、それなら曲単位でインパクトのあった前作の方が好みかな〜というところ。 どうでもいいけど、タイトルの Syrophenikan って、何の意味だろう?


1990年
3rd アルバム
注目曲 : #1 「 Embodying 」
 リードトラックはさすがにカッコイイですね。中近東風の旋律とドスドス&チャカポコの複層的なリズムが混沌と融合した暗黒環境音楽。



1991年
4th アルバム
Stone Tower

 まだまだインスト・アルバムが続きます。前作で芽生えたエスニック感覚はここでは姿を消し、ひんやりと無機的なダークアンビエント作品となりました。 今回は・・・宇宙船内のコールドスリープ装置で深い眠りにつくときの BGM ってとこか。 そうそう、かの有名な映画 『エイリアン』 の船内のイメージですな、この不穏な感じがだ。 醸しだす雰囲気自体は Delerium というよりはむしろ Front Line Assembly 的で、 翌年の FLA の 『 Tactical Neural Implant 』 なんかにも近いものがあります。 まあしかし、どの曲も起伏に乏しい徹底的なアンビエント攻撃なもんで、 BGM の域を脱しない間延びした感じがちょっとねえ。 パソコン作業のお供にしても、2〜3曲目以降はどんな曲があったのか思い出せない程インパクトに乏しく、 適当に3周くらい流した後は、残念ながらお蔵入りになってしまいました。また暫く寝かしてから聴いてみようかな。
注目曲 : #9 「 Relics 」
 この曲だけボーカルというか、声のサンプリングが使われています。言語以前の原始の声というイメージ。

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Karma

 デレリウムの 9th アルバムは、エスノ+チャント+エレクトロといった彼らの音楽性を最も分かりやすく、そして高次元にて融合・体現を果たした代表作。 低〜中速のダンスビートとパーカッションを織り交ぜたリズムが、 夢遊的なコーラスと民族楽器の音色を纏いながら心地よく流れるサウンドは極上そのもので、 単なるムード・ミュージック/ヒーリングに終わらない独特の魔力が聴き手を非日常の別世界へと誘い込みます。 アルバム全体の半数を占めるようになったボーカル曲の充実ぶりも目覚しく、 中でもカナダの女性シンガー Sarah McLachlan をフィーチャーした感動的なシングル曲 #4 「 Silence 」 は、 後に様々なリミックス・バージョンが現れてフロア・シーンでもその名を轟かせた大ヒット曲。 今となってもこの曲がデレリウムで一番有名ではないでしょうか。 インストの方も相変わらず長い曲が多いのですが、以前ほどはダレないかな? という訳で、本作をデレリウムの最高傑作に推したい ・・・ところですが、コマーシャル・パワーに屈した管理人は次々作 『 Chimera 』 の方をよく聴くんだな、これが。


1997年
9th アルバム
注目曲 : #2 「 Duende 」
 「 Silence 」 も確かにいいけど、この曲もプッシュ。森の妖精たちが奏でる歌のような、サビの摩訶不思議なコーラスがイイ。



2003年
11th アルバム
推薦盤
Chimera

 Delerium の近年の人気作品 11th アルバム。 従来の作品群を色づけていたマニアックな側面を封印してキャッチーなボーカルトラックを全面に押し出した甘口エレクトロポップな楽曲群は、 メインストリームで売りまくることを意識したのでは?と勘ぐりたくなるような、確信犯的な出来の良さ。 前々作 『 Karma 』 あたりで顕著だった神秘的なムードやエスニックな要素はここでは薄まっており、 全体的に普通っぽいエレクトロニカ/ダンス・ミュージックにまとまってしまった感は否めませんが、 それを埋めあせて余りあるくらいゲストの女性ボーカルたちの歌メロは素晴らしく印象的で、 清涼感溢れる美メロがしっかりと耳を癒してくれます。 特にアルバム前半の完成度は鉄壁そのもの。 当たり障りの無いヒーリングミュージックがまったりと続くアルバム後半は、収録時間が長いこともあってさすがにダレ気味ですが、 しかしこれだけ聞かせてもれえば十分満足ですよ。万人にオススメできる一品です。
注目曲 : #2 「 After All 」
 スイスの女性シンガー Jaël をフィーチャーしたシングル曲。哀愁を湛えたメロディーが素晴らしく、クリアーで心地よい音像です。ボーカルのエフェクトの使い分けも効果的。