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Die Krupps


 1979年(早いね)に結成されたドイツのインダス系バンド。初期はニューウェイヴ系から出発し、EBM → インダストリアル・メタル → スラッシュメタルと音楽性を凶暴化させながら6枚のオリジナル・アルバムと多数の企画ものをリリース。その中の一つに、メタリカの楽曲をピコピコのシンセサイザーでカヴァーしたトリビュート・アルバムなんてのもあります。これは笑った。ドイツ本国では KMFDM などと並んで人気バンドだったそうですが、ここ日本ではインダス党や一部のメタラーを除いてあまり浸透していないようです。CDも普通のお店では見かけませんねぇ。バンドは1999年に解散しましたが、最近になって復活、ヨーロッパ各地でライブ活動を繰り広げている模様。

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1982年
1st アルバム
Volle Kraft Voraus

 フルレングス 1st 。前年発表のデビュー EP を含めたら 2枚目となる本作。 まあ、入手する前からいろいろ噂には聞いていましたが、噂通りの凄まじく 「ヘン度」 のメーターが振り切れた、 疾走ニューウェイブ・エレクトロ・パンク・アルバムです。 DAF 的な単音シンベとチープなリズムマシンを軸に、「ボィ〜ン」 とか 「ポコン」 ってな効果音が入り乱れ、 キッチンから引っ張り出したようなメタルパーカッションがチンチンカラカラ忙しく鳴りまくり、 さらに極めつけは 「アゥ!」 とか 「ァハ〜!」 とか気が触れたような、しかし妙に真剣なユルゲン君の初々しいボーカルが飛び出すもんで、 これではもはや性急なチンドン屋に他なりません。 電車の中で聴いていると、舌を噛んでいても危うく噴き出してしまいそうです(笑)  そんなネタ以外何ものでもなさそうな代物ですが、曲作りのツボみたいなものは何気にしっかり抑えられていて、出来は悪くないんですね。 「 Volle Kraft Voraus 」 や 「 Goldfinger 」 や 「 Wahre Arbeit - Wahrer Lohn 」 あたりはプロダクションの面をさておけば、 バンドを代表し得る名曲だと思います。2007年の 『 Too Much History 』 で生まれ変わったバージョンを聴けば、そのことがよく分かります。
注目曲 : #7 「 Wahre Arbeit - Wahrer Lohn 」
 メタパー好きにはたまらない疾走トラック。 11曲目も同タイトルの別バージョンで、こっちの方が 『 Too Much History 』 収録バージョンに近いです。

Entering The Arena

 ギャグとしか思えないような前作からしたら、一応音楽として常識的な域へと無事仲間入りを果たした 2nd アルバム。 サウンド的にはニューウェイブの影響を引きずった実験的なディスコ・エレポップといった感じで、まだまだ EBM と言えるかは微妙ですが、 シンセサウンドの厚みが増していてリズムトラックの強度も格段にアップ。 女声コーラスの導入やユルゲン君の歌メロにややソウルフルなテイストを感じさせるあたり、全体として KMFDM の 『 Monry 』 との共通点を見出せます。 (この時点ではギターノイズは皆無ですが。) あと、コアな話ですが Ministry の 1st にも近いです。 そう考えると、Die Krupps と Ministry の音楽的変遷は、 エレポ → 実験EBM → ヘヴィメタル化・・・といった具合に、似たような道のりを歩んできたんだな〜と、 今さらに再認識しつつ聞き込むと・・・いやいや、このアルバムもやっぱり 「ヘン度」 が高いですわ(笑) 特にユルゲンのボーカル。 それと、このジャケ絵のデザインは良いですね。中身の音楽を正しく表現しています。


1985年
2nd アルバム
注目曲 : #1 「 Risk 」
 運動会でも始まりそうなオープニングがカッコイイ曲。スネアがたまにピシピシ鳴ってて無駄に躍動感アリ。

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1993年
4th アルバム
II: The Final Option

 4thアルバム。むかーし新宿のディスクユニオン・メタル館で偶然発見してゲットした一枚です。これほど EBM 臭満載でも一応メタル館に置かせてもらえるんだな〜とか感慨に耽ったりしたもんですが、作風としては前作の延長上で、ピコピコタポタポの EBM サウンドに、強度を増したザクザクのギターリフを注入。ユルゲンのボーカルも一段と迫力がついてきて、スラッシーな攻撃サウンドに素晴らしくマッチ。以前のような違和感はもう感じられません。お得意のメタルパーカッションは影を潜めた感がありますが、今作では微妙に異国情緒的なアレンジが隠し味としてアクセント。全体的に楽曲のテンポが速めなのも好感度大です。#4 「 FatherlandDie Krupps 」 は珍しくキャッチーな哀愁メロが炸裂で、バンドの代表曲たりうる名曲。Die Krupps を知らない人に 「 Die Krupps ってどんな音出すの? 」 って聞かれたら、オレはこのアルバム差し出します。本国ドイツでは大ヒットを記録したそうで、4曲のシングルが本作からカットされました。4曲もかよ。
注目曲 : #6 「 Iron Man 」
 鉄男っ! これも好きだな〜。ノリノリダンスビート+ザクザクギターリフでカッコイイです。

III: Odyssey Of The Mind

 3部作のラスト(?)となる5thアルバム。彼らの作品では唯一世界的に発売されており、比較的 CD の入手も容易です。サウンド的には同年のラムシュタインの 1st にも近い典型的なインダストリアル・メタルで、スラッシュギターリフとビコビコのエレクトロニクスが高次元で融合。リフに重きを置いたギターサウンドは一段と攻撃的になる反面、かつての EBM っぽさはすっかり抜けてきました。捉え方によっちゃあ、これはメタリカ meets エレクトロニクスですな。しかし、#4 「 Eggshell 」 や #9 「 Metalmorphosis 」 で飛び出すメタル・パーカッションの存在感は別格。これが頭をカチ割るような破壊力で鬼カッコいい。カコーン!パカーン!ってね。楽曲の完成度も高く、ノリの良いスピードチューンを適度に挟みながら、前作にも見受けられたエスニックなアレンジも交え、冒頭と末尾をドラマチックな楽曲で挟むアルバム展開も隙なし。次作 『 Paradise Now 』 ほどブチ切れてはいませんが、トータルとしての完成度・バランス感覚からして、個人的には Die Krupps の最高傑作だと思います。


1995年
5th アルバム
推薦盤
注目曲 : #10 「 Alive 」
 ラスト曲はユルゲンがコブシを効かせて熱唱する泣きのバラード。メロディーが叙情的ですが、音は硬派です。



1997年
6th アルバム
Paradise Now

 オリジナルとしては最終作。3rd アルバム以降徐々にメタル化を推し進めてきた彼らですが、このアルバムで行き着く所まで行った感アリ。デビュー時をリアルタイムで体験したリスナーは決して想像だにしなかったであろう、この音の凶悪化、破壊力倍増! もはやモダン・ヘヴィネスと呼ぶに値する激重ギターノイズは骨を抉るがごとく唸りまくり、ボーカルのユルゲンも別人のように吼えまくりじゃねーか。これはヤバイ、カッコ良すぎです。#12 「 30 Seconds 」 なんか快速ノリノリ・ダンシング・スラッシュメタルで超最高。でも、作品全体としては前作の方が好みなんですよね。ギターリフがあまりにゴリゴリ鳴りまくりなもんで、かえってアルバム展開としては若干起伏に欠ける気もするし、エレクトロニクスの出番が減ったこともあって、クルップスらしい変態的個性も薄れ気味かな〜と。まあそれでも、インダストリアル・メタル作品としては最高峰と言える存在感を誇っており、バンドの到達点として文句なしに名盤指定です。現在アルバム入手困難なのが残念。
注目曲 : #9 「 Fire 」
 60年代後半の UK サイケデリック・ロック・アーティスト Arthur Brown のカバー曲。ユルゲンのお茶目ボーカルとクルップスらしいキーボードサウンドが絶妙にハマった名カバーですね(笑)

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Too Much History

 再結成に伴いリリースされた全曲新録(!)の豪華デジパック仕様2枚組のベストアルバム。「 Electro Years 」 と 「 Metal Years 」 で1枚ずつバラ売りもしてまして、最初は迷ったけど結局両方欲しくなるに違いないってことで、管理人はこっちのお得なセットを購入しました。いや〜嬉しいですね〜。 『 I 』 以降のメタル時代はまだしも、1st アルバム収録曲なんか25年ぶりに蘇るわけでしょ? とりあえず冒頭の 「 Machineries Of Joy 」 を聴いたときは歓喜でした(笑) ビートは圧倒的にタイトになり超ノリノリ、エレクトロニクスの厚みは3倍増、ギターノイズもいい感じで効いていて、そして何より増量され乱舞するメタルパーカッション! ピーカン ピーカン カンカラカン! うおーたまんねぇぇぇ!! 小躍り小躍り。蛍光ピンクのピタピタスーツを着てこのアルバム流しながらエアロビ体操したら究極の変態だと思います(笑) ユルゲン節も健在健在。2枚目の 「 Metal Years 」 の曲は元々十分ヘヴィだから衝撃度は 「 Electro Years 」 に比べたら控えめで、実際オリジナルの方が好きだったりしますが、どうせなら両方まとめて買っちゃいましょう。『 Paradise Now 』 収録曲が1曲だけなのが少々残念ですがー。


2007年
コンピレーション盤
推薦盤
注目曲 : Disc2 #4 「 Goldfinger 」
 オリジナルに比べ格段にスピードアップで疾走ノリノリ。これも素晴らしい。