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Fear Factory


 1989年結成のカリフォルニア出身のインダストリアル・メタル・バンド。バートン・C・ベル ( Burton C. Bell ) のデス声とクリーン声を使い分けるボーカルスタイルと、「人間機械」とも称される強靭かつ正確な演奏、そしてサンプリングを交えた近未来的な世界観はバンドの身上であり、Sepultura など数多くのラウド/メタル系バンドに影響を与えました。また、高速ダンスビートとメタルリフを融合するという試みは、当時の他のバンドに先駆けたものであり、「モッシュピットとダンスフロアの垣根を取り払った」として、国内のみならずヨーロッパでも高い評価を得ました。バンドはメンバー間の確執で 2002年に一旦解散し、メンバーを入れ替えて 2004年に再結成。現在も一応活動中のようですが、年々注目度は低下気味。

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1992年
1st アルバム
Soul Of A New Machine

 実はこのアルバムに先立って、デビュー作とする予定で楽曲がレコーディングされていたものの、プロデューサーのロス・ロビンソンとの確執により不運にもリリースには至らず(これらの楽曲群は 2002年に 『 Concrete 』 として発表され、ようやく日の目を見ることに)、本作がバンドにとって正式な 1st アルバムとなりました。英国 Earache レーベルのデス・グラインド勢の影響を受けた思しきサウンドは、まさに「エクストリーム」の名の付くものをフルに搭載して超速で人間に襲い掛かるハイテク重機。臭みゼロで血の気のないあたりはインダストリアル的な質感もあります。92年の時点でこれほど強力なデビュー作を放った彼らは本当にスゴイと思いますよ。でも音楽性はハッキリ言って発展途上。アルバムのテンションは最初から最後まで全く衰え知らずだけど、曲1つ1つに注目してみると個性がイマイチで耳に残らない。バートンのボーカルについてもシャウトは申し分ないけど、歌メロのセンスはまだ熟してなくて全然ダメ。ていうか、そもそもあんまりメロってないです。その代わり、整った感じ(整っちゃいないか?)の次作に比べて荒削りな野蛮さが魅力。エクストリーム音楽としては一級品でしょ。
注目曲 : #2 「 Leechmaster 」
 これでもかと言わんばかりのブラストビートの攻勢。もうスゲェ!

Demanufacture

 バンドの最高傑作との呼び声高く、インダストリアル・メタル史上にその名を永く残すであろうフィアファクの 2nd。何と言っても楽曲のクオリティが格段に向上しています。#1 〜 #3 の流れはもう鉄壁。ネズミ一匹入り込むスキも無いです。激速激重なのは前作同様ですが、音質がさらに金属のようにガチガチに硬くなってて、強圧バスドラムの連打が骨の髄までズキズキ響きまくり。ギターもしかりで、骨の周りの肉を削ぎ落とすような荒仕事。しかもこの人たち、コンピューターに制御されているかのように恐ろしく正確に演奏します。デス声と歌メロを使い分けるバートン節にも磨きがかかり、その歌メロの旋律はまるでグレゴリオ聖歌(と思うのはオレだけ?)。デス声シャウトの後に訪れる例のもったりメロディには毎度ワクワクさせられます(笑) #2 「 Self Bias Resister 」 なんか白眉の出来栄え。どの曲も凶暴でへヴィなのに、その一方で妙な清潔感もあったりするのもフィアファク・ミュージックの面白いところ。日本盤ボートラの Agnostic Front のカバー曲 「 Your Mistake 」 もカッコイイ!


1995年
2nd アルバム
推薦盤
注目曲 : #5 「 New Breed 」
 マシンビートで押して押して押しまくる強圧ダンストラック。カッコイイ。このサウンドは当時としては斬新なもので、フィアファクはまさにニュー・ブリードな存在でした。(過去形)



1997年
リミックス盤
Remanufacture

 『 Demanufacture 』 のまるごとリミックス(新曲も2曲収録)。実は管理人が一番最初に聴いたフィアファクの作品がコレ、という訳で、自分の中ではフィアファクといえばこのアルバムの印象が強くなってしまうんですよね。それはさておき、作風はインダストリアル・メタルとテクノの異種配合で、ジャングル、ダブ、ガバ、アンビエント、ヒップホップなど、様々なアレンジが施されています。ブラストビートやギターの出番が随分減って打ち込みがメインになったので、近未来都市的な SF オーラも格段にアップ。Prodigy っぽくなりました。あともう一つ面白いのは、『 Demanufacture 』 では脇役だった曲が、こっちで新たな魅力&個性を獲得していること。「 T-1000 (H-K) 」 なんかは見違えるようなインパクト。逆に地味になってしまった曲もあります。完全フロア対応化したこのアルバムは、フィアファクが 「 New Breed 」 でその片鱗を見せていたダンス・テクノの才能が存分に引き出された作品と言えましょう。なかなかオススメですよ。
注目曲 : #8 「 T-1000 (H-K) 」
 「月・月・火・水・木・金・金!」みたいなシャウトにシビれた(笑) ガバ・ミックスというよりは、何つーか、格ゲーで必殺技が出せなくて強パンチを連打するかのようなゴリ押し感。

Obsolete

 ここ日本でもフィアファクの名を広く知らしめることとなった 3rd アルバム。まずは歌詞カードにご注目。曲と曲の間に人間と機械の戦いを描いたストーリーがご丁寧に綴られていまして、これは立派なコンセプト(先行!)アルバムといえる内容に仕上がっています。が、しかし音の方は前作と比較するとスピード感は控えめで地味。もちろんバスドラがガシガシ効いたあのリズム感はフィアファクにしか出せない妙技だと思うのですが、肝心のブラストパートが随分減ってしまいました。それでも激重リフやバートンのシャウトは健在で、サウンドの迫力は相変わらず抜群。「インダス風味の高速ヘヴィロック」と考えれば、十分良い作品です。ストリングスを導入したドラムレスの号泣バラード #10 「 Timelessness 」 は新境地(笑)


1998年
3rd アルバム
注目曲 : #9 「 Resurrection 」
 戦闘機で大空を飛び回るように気分爽快。メロディーが素晴らしい感動系シングル曲。

 1999年リリースのシングル曲 「 Cars 」 の PV。この曲は 80's 英国テクノポップ界の自閉アンドロイド Gary Numan の代表曲のカバーで、Gary Numan 本人もボーカル参加。おまけに PV にも夢の競演! SF 繋がり(?)の秀逸なカバーでラジオでもヘヴィロテされ、フィアファクの知名度は格段にアップしました。あのもったり歌メロといい、この曲のチョイスといい、バートン・C・ベルはかなりのニュー・ウェイヴ好き、と見た。
 あと、PV の中で約一名、見た目がヘヴィな感じの人がおりますが、彼はバンドのリーダー格にしてギタリストのディーノ・カザレス ( Dino Cazares ) 氏です。

Digimortal

 『 Obsolete 』 や 「 Cars 」 のヒットでメジャー感をアップさせたフィアファクが新世紀に放つアルバム。ディーノ・カザレス氏曰く「このアルバムは売れて欲しい」とのこと。「俺もマルくなったのかな」だってさ。お言葉ですが、丸くなったのは精神面だけではないような、まあアレだ。
 で、本作ですが、オレ的にはこれは NG です(笑) 『 Obsolete 』 が傑作である 『 Demanufacture 』 の二番だしだとしたら、このアルバムは三番だし。何はさておき、かつての疾走感が全然無いよ! まあスピード面には目を瞑るとしても、メロディーの質もどことなくチープだし、他に際立ったセールスポイントも見当たらず、ただのヘヴィロックに成り下ってしまいました。演奏のパワーはさすがに健在ですけど、流行のデジタルテイストに頼ったアレンジセンスや、 #8 「 Back The Fuck Up 」 で飛び出すバートンの安易なラップはどーよ? 何つーかマーケットを意識しまくりで寒い感じ。この手の音楽なら Roadrunner レーベル探せば幾らでもいるんじゃないかと。フィアファクの個性が薄くなってしまって私としては残念です。まあ本人達がこれまでとは違う方向に進みたかったのだと思います。


2002年
4th アルバム
注目曲 : #6 「 Invisible Wounds (Dark Bodies) 」
 ギターが例外的にクリアーサウンド。この曲がアルバムの中央に配されていて、良いアクセントになっている、だそうです。

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 4th アルバム 『 Digimortal 』 発表後、ボーカルのバートンが「何かバンドの歯車がおかしくなってきたから」という理由でバンドの脱退を表明、それをきっかけにフィアファクは12年に渡る活動に終止符を打ちました。ところが解散したのもつかの間、バートンはすぐさまバンドの建て直しを行い、今までベースを担当していたクリスチャンがギターに転向し、オーディションで新たなベーシストを補充して再始動。実はこの一連のゴタゴタ、トラブルメーカーであったギタリストのディーノ・カザレス氏をバンドから追い出すための謀略だったようです(笑)
 ディーノは時を経るにつれて体格がヘヴィになってしまったことでもよくネタにされ、メンバーの集合写真なんかは、彼のヘヴィ具合を見れば、それが何年頃のものかすぐに判って便利です。もしディーノの姿が無ければ、それはもちろん最近の写真ということですね(笑) フィアファク解散後、ディーノはデス・グラインド系の別バンドで頑張ってるようですが、最近はオランダのゴシックメタルバンド Epica と競演した、みたいなことがウィキペディアに書いてありました。

 管理人は再結成フィアファクに対する興味が全く湧いてこないので、5th 『 Archetype 』 と 6th 『 Transgression 』 はノーフォロー。まあ、もういいかなって。