N O M O S  A L P H A     Map   Genre   Index   Label   People   Column   Link   Info

Goldfrapp


 アリソン・ゴールドフラップ ( Alison Goldfrapp ) とウィル・グレゴリー ( Will Gregory ) の2人による英国産エレクトロ・ポップ・デュオ。てか、ゴールドフラップってこの女性一人だけかと思ったら、もう一人ヘンな男がいることに CD 買って初めて気づきました(笑) キーボード担当みたい。
 アリソン・ゴールドフラップは、トリップホップ系アーティスト Tricky のデビュー・アルバムにゲスト・ボーカルとして参加したことを契機に音楽業界に進みました。デビュー作は英国でゴールドディスクを獲得し、評論家筋からも絶賛。2nd アルバム以降は、その音楽性をポップに変化させつつ、アリソンのビジュアル面もマドンナ的というか、「私はファッション・アイコンになるのよー!」みたいな意気込みがヒシヒシと感じられるようになってきました。でもこの人、年齢は公表していないらしく、噂ではもう既に30代後半。あるいはもっと上? 確かに、よーく見ると全ー然若くない(笑)

−−−−−−−−−−−−−−−



2000年
1st アルバム
推薦盤
Felt Mountain

 好みにもよると思いますが、これがゴールドフラップの最高傑作。やっぱ 1st のこの雰囲気が一番ですね。夜空から舞い降りる雪のように幻想的で、ミンクのコートのように滑らかで、路地裏の酒場の揺らめくランプのように怪しく美しい、隔絶された音の空間。これはレコードに針を落とした瞬間から聴き手をロマンチックで尚且つどこか退廃的なレトロフレンチ的世界へと誘うアルバムなのです。シャンソンみたいな憂鬱メロをしっとり歌い上げるアリソンの妖艶ボーカルも魅力的で、弦楽器やチェンバロの音色をあしらったクラシカルなアレンジが巧みに引き立てています。アルバム後半で顕著な別世界のシンセサウンドはビョークのそれを彷彿とさせるし、全編を支配するダウナーな沈静効果はトリップホップ的なところもあるかも。2nd 以降のポップネスはここにはありませんが、独特のコンセプトに裏打ちされた捨て曲なしの素晴らしいアルバムです。これは久々にヒットでした。
注目曲 : #1 「 Lovely Head 」
 口笛が奏でるレトロな旋律とチェンバロサウンドがこのアルバムを象徴する曲です。

Black Cherry

 ジャケットのアリソンがゴスロリ路線というか、何だか「不思議の国のアリス」的なノリに様変わりしちゃってますが、作風も以前よりメインストリーム受けを意識した、しかし決して陽気に弾けはしない、微妙にダウナーなお洒落エレクトロポップになりました。エフェクトを多用したシンセサウンドと遅めのエレクトロビートが構築する、完全デジタルな音世界。そこに乗っかる非日常的かつ女性的なメロディーは「癒し7割」と「覚醒3割」みたいな絶妙な均衡を保っていて、アルバムの完成度・展開共に充実の内容だと思います。次作 3rd より統一感もある。ただ、ここでは 1st のレトロ・パリジャンな雰囲気はすっかり消え失せているので、そこに感銘を受けた人がこのアルバムに馴染めるかどうかは難しいところ。「なんだ全然違うじゃん!」って思う可能性大。でも逆にキュートな 2nd が一番好き!って人も結構いるだろうな。


2003年
2nd アルバム
注目曲 : #3 「 Black Cherry 」
 メロが滑らか〜な感じの低速ビートのバラード曲。トリップホップ的です。

 2nd アルバムからのシングル曲 「 Strict Machine 」。ちょっと気の抜けた可愛げな高音メロが良い。ボムボムのシンベ音の使い方が古典的で、70年代サウンドをモダンに再解釈した感じ。PV もアーティスティックな映像美でお気に入り。ゴールドフラップを象徴する曲を一つ選ぶとしたらコレかな。

Supernature

 ジャケットのアリソンは今度はトップレスで王道セクシー路線まっしぐらですが、作風もより一層メインストリーム受けを狙ったポップな作品になりました。#1 「 Ooh La La 」 なんか随分と開き直ってノリノリッ。こうやってゴールドフラップの作品を順番に並べてみると、メロはどんどん楽しく明朗に、エレクトロサウンドは派手になっているし、テンポも速くなっているんですね。今作はもはやダンサブルな領域に踏み込んどる。それでいて単純な8ビートを使った曲も多く、何気にアプローチ自体はロック的な部分もあって、ここら辺ブリットポップ時代の Garbage を彷彿とさせたりも。アーティストとしての個性は薄くなったとは思いますが、グラムロックにも通ずるレトロさ加減や、トリップホップの沈静エッセンスは巧みに受け継がれていて、80年代ニューウェイヴもひっくるめ英国ポップスの美味しい所を頂くセンス、というか節操の無さは特筆に値します。下世話になりすぎないバランス感覚も英国気質ってとこか。


2005年
3rd アルバム
注目曲 : #1 「 Ooh La La 」
 ウ〜ラララ〜♪ のサビがグラムっぽいノリノリ先行シングル曲。前作の 「 Strict Machine 」 をさらにポップにした感じ。PV も含め、最初はこれはさすがにベタだろ!と思ったけど、やっぱりベタじゃないと思うんです。しかも正直ハマるハマる。



2008年
4th アルバム
Seventh Tree

 刺激的なクラブサウンドを全面に押し出した前作とはガラリ変わって、本作ではゆったりとナチュらかな癒し系サウンドを展開。全編に渡ってアコースティックな感覚で統一されており、シンセを使ってもデジデジなテクノっ気は希薄で、リズムトラックも生ドラム音。というか、そもそもリズムレス or アンビエント的な曲が多いです。1st アルバムの頃に回帰したという声もありますが、あんな真冬の暗鬱レトロフレンチ的世界観とは全然違って、これは春の訪れを予感させる、ぽかぽかと暖かい雰囲気です。2月後半というリリース日も計算づくではないかと。明るい小森の切株に座って童話を読みながらウトウト居眠りしたくなる・・・そんな良質のBGM。ただ、サウンドが控えめになった分、インパクトの弱さは否めないし、それを埋め合わせるくらいメロに秀でてる訳でもなく、個人的には Goldfrapp の可能性に限界を感じてきました。毎回ジャケット等のアートワークと中身の音楽のイメージが完璧にマッチしてるあたりはアーティストだな〜と思うがな。
注目曲 : #7 「 A&E 」
 先行シングル曲。一聴したら「何か普通っぽくなっちゃったな〜」と思ったけど、メロは確かに良く、そこそこお気に入り。

Head First

 順調なペースで走るアリソン姉さんの最新作。 今回のコンセプトは80年代シンセポップの再現なのか、リードシングル曲 #1 「 Rocket 」 の冒頭から鳴り出す、 チャッ チャー てな、この懐かし〜い感じのシンセサウンドときたら、かの Van Halen の名曲 「 Jump 」 を思い出しましたよ。 80年代ディスコ + ニューウェイブ + エレクトロ という取り合わせは、Madonnna の 2005年のアルバム 『 Confessions On A Dance Floor 』 にも相通ずるアプローチで、 やはりポスト・マドンナの座を狙っているのか? と勘ぐってしまいますが、7曲目や9曲目など、いつものアリソン節も健在。 もっとも初期の頃のようなデカダンムードは完全に薄れていますが、楽曲の完成度はおしなべて高く、アーティストとしての光彩が失われていないあたりは一安心。 なんせ毎度のことだが、ビジュアル的なアートワークと音楽性のマッチングの妙技ときたら、この人はもう達人の域。 このアルバムをカーステレオから流せば、虹色の雲の上をドライブできそうです。


2010年
5th アルバム
注目曲 : #8 「 I Wanna Life 」
 個人的に本作のベストトラック。マイナーコードのAメロBメロから一転、鮮やかに飛び出すキャッチーなサビメロが Good!