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Killing Joke


 ジャズ・コールマン ( Jaz Coleman ) 率いるオルタナティヴ・ロック・バンド。78年に結成して以来、何回か休止期間を挟みながら現在も第一線で活動を続けるという、今となっては数少ない UK ポストパンク生き証人です。The Cure や New Order らのニューウェイヴ勢と比べると Killing Joke は硬派なサウンドが特徴であり、特にギシギシと金属やすりのようなギターサウンドは、聴けばそれと分かる強烈な個性。これまでセールス面では目立った記録は残さなかったものの、Helmet や Tool といったラウド/メタル系、Ministry などのインダストリアル系、さらにはゴシック系やパンク/ハードコア系に至るまで、後続の様々なジャンルのアーティストが彼らからの影響を公言しています。
 ボーカルのジャズ・コールマンはイギリス人とアーリア人の混血で、幼い頃から音楽の英才教育を受けたという生粋のミュージシャン。彼は自分の IQ は 190 だと主張しているらしい。ホントかよ。

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1980年
1st アルバム
Killing Joke

 ポストパンクの金字塔、彼らの記念すべきデビュー作。ガリガリの硬質ギターリフ、引き締まったリズムセッション、歪曲したエレクトロニクス、そしてジャズ・コールマンの突き放すようなボーカルにクールなメロディー。これらが渾然一体となって生み出されるサウンドはアグレッシヴで尚且つストイック。 #4 「 Bloodsport 」 のダンサブルなリズムや、#7 「 S.O.36 」 の廃墟的なムードは、彼らが時代を先取りした次なるステージに進んでいることを示しており、それでいて #5 「 The Wait 」 #6 「 Complications 」 のシンプルな疾走パンクもカッコイイ。一聴すると地味かな?って思いそうですが、聴き込むとジワジワと味が出るスルメ状態。糖分ゼロ、油分ゼロの名盤辛口ポストパンク作品です。
注目曲 : #2 「 Wardance 」
 ディストーションでボコボコに潰れたAメロの後のサビのクリアーなコーラスがカッコイイ。何か革命的な雰囲気。

 初期の代表曲 「 Wardance 」 のライブ映像。キーボード弾きながらがなり立てるジャズ・コールマンは・・・ややポジパン的な顔面メイクでした。初期のバンドのラインナップはボーカルのジャズ・コールマンの他、Kevin "Geordie" Walker (ギター)、Martin "Youth" Glover (ベース)、Paul Ferguson (ドラム)の4人編成。



1981年
2nd アルバム
推薦盤
What's THIS For...!

 同時期の PIL や Gang Of Four や The Pop Group とかと一緒にエスノ祭り開催だ〜、って企てた訳でもないでしょうけど、このアルバムでは密林から聞こえてきそうなワイルド・ビートが炸裂! ややもすると曲展開が単調だった前作と比べて、圧倒的に手数を増したドラムが弾き出す変則ビートが実にカッコ良く、その繰り返しがダンサブルなグルーヴ感を生み出すフロア対応な一枚。スクエアリズムに乗せた開放的なコード進行が印象的な #2 「 Tension 」 やエレクトロニクスを導入したダンス系 #5 「 Follow The Leaders 」 はまさにキラートラック。それでいて不安を煽るような旋律使いやガリガリのギターサウンドは健在で、「 Positive Punk 」 としても 「 old EBM featuring guitar noise 」 と捉えても聴き応え満点。個人的にはキリングで最もお気に入りなアルバム。
注目曲 : #5 「 Follow The Leaders 」
 ドコドコと畳み掛けるビートとピシピシいわせたタイトなスネア音が good! ベースもいい仕事してます。

Revelations

 本作リリースに先立って、ジャズ・コールマンとギタリストの Kevin "Geordie" Walker がアイスランドへ移動。当時そこでジャズ・コールマンはオカルト信仰に嵌っていたとか何とかですが、現地のバンド Theyr (このバンドは後に The Sugarcubes へと発展する)と交流したりと、音楽の方も研究していたようです。暫くしてジャズ・コールマンはマトモさんに戻り、他のメンバーも合流して結局イングランドへ帰還。そんなゴタゴタの中で制作された本作、ここでは前作のエスニックビートは影を潜め、不協和コードが支配するマニアックな作風になりました。この淀んだ空気、やっぱりオカルト信仰の影響なのか・・・。音階的な味付けを控えめにギシギシとリズム刻みに徹するギタープレイ、前作みたく踊れない地味になったリズム、繰り返しの多い平坦なアルバム展開、そして宙をフラフラ彷徨うジャズコールマンの歌唱。見せ場に乏しく、取っ付きにくい、微妙〜なアルバムです。イマイチ曲が印象に残らねえ。でも、こんな音楽は他では聴けないだろ?って言われたら、まさにその通りであって、「孤高」と形容されるべきキリングサウンド満載ではあるんですが。


1982年
3rd アルバム
注目曲 : #8 「 Land Of Milk And Honey 」
 5th アルバムの 「 Eighties 」 みたいな強力なリフは無いけど、表打ち連打の高速トラック。ミニストリーもこういう曲から影響受けてるんだろうな〜と。



1983年
4th アルバム
Fire Dances

 ベーシストが後にミニストリーでも活躍する故ポール・レイヴン ( Paul Raven ) に変わっての4作目。気持ち悪いお面かぶって「悪霊さん目覚めよ!目覚めよ!」とか言いながらキャンプファイヤーみたく炎を取り囲んで踊り狂うようなイカレタ音楽ですこれは。タイトルもジャケ絵もサウンド面に忠実。マニアックな作風という意味では、前作によく似たアルバムですが、リズム感はちょっと違くて、こっちのは何か変なものを呼び起こすようなイメージ。やたら1拍目(表)を強調しています。そして付点の酔っ払いリズムが多い。ギターも初期のとは違う淀んだサウンドで、不穏なコード進行の連続攻撃。てな訳で、聴く人の好みがハッキリ分かれそう。
注目曲 : #4 「 Frenzy 」
 基本的に同じリフをひたすら繰り返しながら、終盤はスピードアップして終了。変な曲だ。

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Night Time

 中期キリングの代表作。ジャズ・コールマンが「あ痛たたたたっ」ってやってるジャケが目印です。さすがに前2作品がマニアック過ぎたのか、このアルバムではメインストリーム受けを意識したようなポップで明快な作風です。ディスコ受けを意識したリズム感も顕著で、メロディーラインも叙情性が備わってきました。てか、こんなに「歌唱性」溢れるジャズ・コールマンも初めてですな。ギターサウンドにしてもボーカルの歌唱にしても角がとれてきて、一般リスナーにも受け入れられそうなバランス感覚に優れた一枚ではあります。その反面、個性の薄れた無難な作りとも言えるし、アルバム中盤もやや地味で面白みに欠ける。次作の方が開き直って新しいことやってると思うな〜。とりあえずバンドの有名曲が多数収録されているので、ファンなら是非。


1985年
5th アルバム
注目曲 : #8 「 Eighties 」
 表打ち連打&ジャズ・コールマンのシャウト頻出のアグレッシヴ・ロック楽曲。キリング・ジョークで一番好きな曲かも。ところで、この印象的なギターリフは、後のニルヴァーナの曲 「 Come As You Are 」 のリフに酷似。2003年の 11th アルバム 『 Killing Joke 』 でデイヴ・グロールがドラムを叩いたのはそのお詫びである、みたいなことがウィキペディア(英)に書いてありました。ホントかい。

 3曲目 「 Love Like Blood 」 のPV。薄っすらシンセ音がゴシカルなムードを漂わせるシングル曲で、次作に近いメロディアスな曲調。この曲はバンドのキャリアの中で唯一ともいえるチャート的に成功したものです(全英シングルチャート16位)。この曲のヒットもあり、アルバムの方も全英11位を記録しました。

ジャズ・コールマン、眉毛濃いなー。

Brighter Than A Thousand Suns

 ファンの間で賛否両論生んだキリングの問題作。以前からその傾向はありましたが、ここに来て音が一気に丸くなってる! 初期の「薄気味悪さ」とは明らかに違う「哀愁」に近い陰影を湛えながら、歪みを最小限にマイルドに鳴らされるギター、普遍的な8 ビートを多用したリズム、その上に薄っすらとオーロラのごとく張り巡らされたシンセサイザーのベール。デビュー時に顕著だったパンキッシュな攻撃性はすっかり影を潜め、まるで冬の星空を眺めるような中道ニューウェイヴ・サウンドを展開しています。ボーカル、ジャズ・コールマンも別人のようなまろやか(というか微妙に甘い)声で終始歌心全開だし、マイクのエコーも普段より強くねーかー?(笑) ってな訳で、要はちとニューロマっぽい。この頃にはニューロマ・ブームは一段落した時期ですが、やや遅れて影響を受けてみたのでしょうか。ちと似たような曲が目立つかな、ってな難点もありますが、よく取り上げられる初期と近年の硬派なアルバムだけでは味わえない、新しい発見のある一枚です。


1986年
6th アルバム
注目曲 : #2 「 Sanity 」
 イントロとかキラキラキーボード音がニューロマ的な甘さでイイぞぉ。サビメロもポップだ。



1988年
7th アルバム
Outside The Gate

 この時期、バンドのオリジナルメンバーであったドラムのポール・ファーガソンがジャズ・コールマンに解雇され、これに怒ったベースのポール・レイヴンも一緒にバンドを離脱。てな訳で、リズムセッションを一新して制作されました。前作ほどニューロマ色は濃くありませんが、作風としては前作の発展系といった感じで、ギターサウンドの攻撃面を極力抑えたキーボード主体の音使いに、仄かにゴスの香り漂う叙情的な夜のメロディー。そして何より特徴的なのは、この大胆でドラマチックな構成。曲の途中で派手に転調したり、仕切り直しするがごとく曲調が一転したりと、各所で曲展開がやたら凝ってて、シンプルな繰り返しが多かった以前のキリングからはとても想像できません。ジャズ・コールマンも朗読するかのような歌唱をみせ、これがバック・ミュージックと共に歌劇の舞台のような演出となっております。試みとしては革新的で面白いアルバムだと思いますが、当時の評価は芳しくなく、実際中盤以降がダレ気味かな〜というところ。
注目曲 : #1 「 America 」
 「アメ〜リカ〜♪」とメロがキャッチーなシングル曲。イントロからして大胆にシンセが鳴りまくりで驚かされます。そういや、ジャズ・コールマンは反米家だったな。

Extremities, Dirt & Various Repressed Emotions

 前年の " 語り " アルバム 『 The Courtauld Talks 』 を挟んでの作品。新しいドラム担当に元 PIL のマーティン・アトキンス ( Martin Atkins ) が参加しています。ここ何作品かキーボードがサウンドの中核を担っていましたが、本作では久しぶりにギターメインのラウドロックが復活。全体的に硬派な姿勢が貫かれていて、「インダストリアル・メタル」とまでは言えないものの、ギターリフはザラザラと無機的な質感。アルバム後半は実験的な要素もあります。ジャズ・コールマンのテンションも一気に高まり、メロメロに音階を奏でていた以前の姿なし。そういう意味ではアグレッシヴなキリング・ジョーク復活への転換点となった重要作。まあしかし、どれもこれも同じような音で攻めてくるもんで、曲があんま印象に残らんですぞい。目立ったキラートラックも無く、正直好きになれなかったアルバム。


1990年
8th アルバム
注目曲 : #4 「 Extremities 」
 このアルバム、スピード的にはそこそこですが、この曲は途中何回か激しく畳み掛けるドラムがカッコイイ。

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 前作のツアー後、ジャズ・コールマンが今度はニュージーランドに移住してしまい、バンドは分裂状態に。彼を除くメンバーは、インダストリアル界隈と関わりの深いスコットランド人の Chris Connelly をボーカルに向かえ新バンド Murder, Inc. を結成。1992年にセルフタイトルのアルバムを発表しました。ジャズ・コールマンは地元ニュージーランドのバンド Shihad の作品のプロデュースを手掛けましたが、何かそれも上手く行かなかったようで、結局キリング・ジョークに復帰するのでした。



1994年
9th アルバム
推薦盤
Pandemonium

 Martin "Youth" Glover がベースに復帰して、前作から4年ぶりとなる復活作。タイトルの 「 Pandemonium 」 は何かの金属の名前かと思ったら全然違くて、「大混乱」とか「伏魔殿」とかいう意味でした。音の方はギターサウンドを主軸に、エレクトロニクスを駆使したテクノ的アプローチと民族音楽的アプローチの両サイドから複雑に絡んでくる感じで、タイトルに違わず呪術的で混沌とした世界観が渦巻いています。特別速い曲はありませんが、ボーカルはアグレッシヴだし、リフもヘヴィ。その隙間からイスラ〜ムな中近東メロが飛び出したり、はたまた意外とメロ重視な歌モノもあったりとなかなか多彩です。アルバム終盤の #8 「 Whiteout 」 と #10 「 Mathematics Of Chaos 」 は「ハウス meets ギターノイズ」的なフロア対応チューンで、この辺り KMFDM にも近い曲調。ですが、ノリノリなのにこのサウンドの曇り具合、さすがポジパン出身だな〜と納得。彼らの数多い引き出しから各種音楽要素を取り出して融合し、それらを高次元へと昇華させた後期の傑作です。
注目曲 : #2 「 Exorcism 」
 さすがに同じフレーズ何度も繰り返しすぎかな〜とは思うが、軍隊みたいなリズムに乗せてガシガシ押し寄せるギターリフ。迫力あります。ていうか、ボーカル激しくむせていらっしゃゥオッホ!・・グハッ・・・ゲッホゲホ! むせてもカッコいいジャズ・コールマン。

Democracy

 前作に引き続き Martin "Youth" Glover のプロデュースによる 10th アルバム。複雑に入り組んだ前作と比べると、このアルバムは王道バンドサウンド回帰のストレートなロックがベースとなっており、ギター音はトゲは少ないながらもそこそこヘヴィ。ジャズ・コールマンは終始力みながら音階をなぞっていて、これは何つーか「ハード・ニューウェイヴ」と呼んでみたくなりました。タイトル曲の 「 Democracy 」 はメロディアスな歌唱性を押し出した壮大な一曲。その他、随所にキリングらしさが感じられて、決して悪い作品ではないです。けどまあ、サウンドの攻撃性、実験性、ポップさ、全てにおいて中途半端な気がして、普通っぽいミドルテンポ曲が並ぶアルバム前半はつまらんかった。後半は一部エレクトロの導入もあり、前半よりはツッコミ所ありますが、総じて言えば、彼らの作品の中でも地味な部類に入ると思います。本作の後、バンドはまたもや長期間の活動中断へ。


1996年
10th アルバム
注目曲 : #8 「 Medicine Wheel 」
 何つーか、竹林からゆらりと侍が出てきそうな尺八イントロに面食らいますが、すぐにエレクトロ混じりのダンスロックへ。そこそこ疾走感あります。

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2003年
11th アルバム
Killing Joke

 久々の復活作は 1st 作以来のセルフタイトル。7年の歳月が流れ、年食ってマルくなるどころか、スゲェ、キリング史上最も凶悪な作品ひっさげて帰ってきました。バンドのラインナップはポール・ファーガソンを除くオリジナル・メンバーの他、ベースのポール・レイヴンがバンドに復帰。さらに特別ゲストに Foo Fighters (元 Nirvana )のデイヴ・グロールがドラムを叩いています。それによって楽曲に力強い躍動感が生まれ・・・とか言うといかにもクサいコメントですねぇ(笑) 私はそんなに耳は肥えてねぇでがす。けど確かに彼のタイトなドラミングはバンドに新たな活力を注入しつつ、キリングの硬派な魅力を引き立たせている気がします。今作はデジタルな味付けは控えめで、生バンドの攻撃ロックで真っ向勝負。機械油が不足してガリガリいうような例のギターサウンドを伴って、ヘヴィに疾走するという、質実剛健な特攻サウンドです(意味不明)。何が気に入らないのかジャズ・コールマンも怒鳴りまくり。おっさん根性あるなぁ。もはやデスメタルの域。ってな訳で、このアルバムは20年以上やってるバンドとは全く感じさせない新鮮なモチベーションと、20年以上のキャリアならではの円熟味の両方を兼ね備えた快作ではないでしょうか。
注目曲 : #7 「 You'll Never Get To Me 」
 ゴリゴリのハードコア・アルバムの中に、あら、やけに叙情的で切ないメロディアスバラード曲があったりするんですね。それでもボーカルはがなり声で歌うあたりが意地。

Hosannas From The Basements Of Hell

 目下最新作となるアルバム。いや〜これも傑作ですよ。前作の攻撃ラウドロックの発展形で、このアルバムは何つーか、芸術性、歴史の重み、あと兵士たちの武勇を感じる内容となっております(ホントかよ)。CD の盤面に注目してみると、これはチェコの首都プラハの旧市庁舎の天文時計と同じデザインで、なるほど、今作のレコーディングはプラハのどっかの建物の地下室で行われたようです。レコーディングに際しては、1979年に購入した古いテープマシンをあえて使ってるそうで、確かに初期の感触に近いラフなサウンドですね。総じて疾走感のある曲が多く、甲冑を身に着けた騎士の軍勢が荒野を駆け抜けるようなダイナミックな迫力。#3 「 Invocation 」 はオーケストラと融合した芸術ロックで、バンドの新境地ではないかと。あと毎度のことだけど、メロってるのにいちいちご丁寧にがなり声をキープするボーカルには正直尊敬します。気合満タン、全曲骨太でカッコイイなあ。唯一の難点は、収録曲の大半が6〜9分台で、全9曲しかないのにアルバムが終了するまでの道のりが実際より長く感じること。オレ的に、これじゃ戦場に着くまでに士気が下がってしまうがな。贅沢だな。


2006年
12th アルバム
注目曲 : #6 「 Walking With Gods 」
 ダンサブルなノリ、開放的になるサビがカッコイイ! そして何より一定のリズムで繰り返されるこのギターノイズ、最高だね。これぞキリングサウンド。