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Ministry


 アル・ジュールゲンセン率いるインダストリアル・メタル系バンド。このジャンルの開拓者であり、NIN らと共にインダストリアルというジャンルを世に広めた超大御所です。82年にシカゴにて結成された当初はディスコ向けのエレポップ音楽でしたが、 2nd アルバム 『 Twitch 』 で、マシンビートとノイジーなエレクトロニクスが交錯する独自の音響世界を確立。その後ベーシストのポール・バーカー ( Paul Barker ) の加入を機に、徐々に音楽性がメタル系に接近し、紆余曲折を経て近年ではより攻撃的なスラッシュ・メタル作品を立て続けに発表しました。予告通り、バンドは 11作目の 『 The Last Sucker 』 を最後に活動終了とのこと。ホントかな。
 こうやって過去の作品群を眺めていると、ミニストリーは共和党が政権を握っている時期に良作を産出しているように思えますね(笑) 保守勢力(というかブッシュ家)に対する批判精神がミュージシャンとしての原動力に繋がっているのでしょうか。とは言いつつも、アル・ジュールゲンセンは大のカントリー音楽好きとして有名だそうです。ここである種の矛盾を感じてしまう時点で、私は俗物なんですね、ええ。アルは本職ミニストリー以外にも、Revolting Cocks や Lard など複数のサイドプロジェクトを掛け持っており、働き者というか、遊び人というか、そんな人。

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1983年
1st アルバム
With Sympathy

 え? いや、うそぉ?! はい、これがミニストリーの記念すべきデビュー作です。ラブソング満載のエレポップ作品。これが極悪なロック・ナンバーを量産したあのミニストリーの初期の姿だったとは・・・。廃盤(?)になっている事実からすると、これは隠したい過去ですな。まー確かにダサいわホント。音はキラキラで迫力はねぇし、アルさんもカラオケみたいに歌いまくりだし。哀愁を帯びたメロディーや甘いムードとかは同時期に英国で活躍していたデペッシュ・モードにそっくり。この作品が「イギリスのニューロマンティクスに対するアメリカからの回答」と評されるのも頷けます。所々ファンキーだったりするのでブラック・ミュージックにも興味があったらしい。管理人はニューウェイヴも好きなので、ミニストリーの作品だと思わなければそれなりに楽しめます、ていうか、ハマっちゃってます(笑) ミニストリーのファンでしたらネタのため、じゃなくてインダストリアル・メタルへの道のりを辿るために一度は聴いてみても損はないはず。
注目曲 : #2 「 Revenge 」
 イントロのキラキラのクサメロがもぅたまらねぇ(笑) 個人的にミニストリーのベストトラック。というのは嘘だが、ちょっとホント。机に向かっていると、このメロディーが頭の中でグルグル回りだして止まらないんです。誰かタスケテ〜。

 「 Revenge 」 の PV で熱唱する若き日のアル・ジュールゲンセン。髪型がスキニー・パピーっぽい気もしてきました。あとオールバックの男の方は、この頃のミニストリーのもう一人のメンバーであった Stephen George なる方。
 後に「あのアルバムは失敗作だった」と語っているアルさんですが、その哀愁メロディーの数々は素晴らしく印象的で、ニューロマ系テクノポップとしては隠れ名盤ではないかと思います。



1986年
2nd アルバム
推薦盤
Twitch

 3rd 〜 5th と比べると知名度は低いながらも、EBM 界では傑作扱いされるセカンド。エレポップ路線を卒業したのか、そのサウンドは重厚なハンマービートがガシガシ効いた内容に様変わりしており、一番最初に鳴る音からして前作とは全く別物。あれほど心をこめて歌っていたアルさんも、今作では冷めた声でざわめくばかり。キャッチーな哀愁メロは影を潜め、EBM 特有の金属音やサンプリングが無機的なムードを生み出しています。ただ、後の「狂気」や「殺気」といったイメージには遠く、適度にポップだったりするので、曲によってはインダストリアルと呼ぶにはまだパワー不足。どの曲も中速で淡々と進む展開なので、むしろ前作の方がダレずに聴けたり、好みも分かれるところですが、洗練されたエレクトロニック・サウンドは青臭いデビュー作より10倍カッコいい。時代を先取りした最高にクールなビート音楽です。
注目曲 : #7 「 Where You At Now? - Crash And Burn - Twitch (Version II) 」
 3曲が1トラックに収まった12分にも及ぶインダストリアルメドレー。前半は 『 The Mind 〜 』の 「 Never Believe 」 からギター音を除いた感じで、終盤は荒れ狂うノイズの嵐。比較的ハイスピードです。

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The Land Of Rape And Honey

 ベーシストのポール・バーカーが新たに加入し、2人による黄金期ミニストリーの幕開けです。当時の EBM /インダストリアル界ではタブー視されていたエレキギターの融合を試みた本作は、「インダストリアル・メタル」なるジャンルを確立するに至った超傑作アルバム。序盤の3曲はギターをブイブイいわせた「テクノロジカル・ハードコア」とでも言うべき疾走チューンで、後半はギターよりもマシンビートやサンプリングを中心に据えた変態 EBM 。さすがにギターの音はまだキャシャだし、「殺気」も70%くらいですが、「狂気」の刃は 4th、5th なんかより冴え冴え。アルさんの声もディストーション効きまくりだし、サンプリング声もキモすぎ。一度でいいからヤクやりながら大音量でこのアルバム流してバッドトリップしてみたいです(無論やりません/笑) 今になって思うのですが、このアルバムはインダストリアル・メタルとしてはもとより、最高に悪趣味で不愉快な「声」をフィーチャーした作品として、もっと注目されるべきではないかと。英語のリスニングが得意だったら、色々とんでもないこと喋ってるのが分かるんだろうな〜。


1988年
3rd アルバム
大推薦盤
注目曲 : #4 「 Golden Dawn 」
 最近はこれが一番好きかな。派手さは無いけど、サンプリングとかギターノイズの使い方とか面白い。曲名に違わず、工場地帯を照らす朝日の情景が目に浮かぶのよ。この曲はモネの名画にあやかって「印象派インダストリアル」と命名しよう。



1989年
4th アルバム
大推薦盤
The Mind Is A Terrible Thing To Taste

 「インダストリアル(メタル)」という超ニッチな市場において前作と次作に挟まれながら未来永劫燦然と輝くであろう名盤 4th 。処刑人のごとく冷徹無慈悲なイントロで始まり、サビでリズムが爆発する #1 「 Thieves 」、印象的なギターリフがノリノリリズムに乗せて進行する #2 「 Burning Inside 」、この2曲はミニストリーを代表するキラートラックで、金属音をカンカンいわせた疾走チューン #3 「 Never Believe 」 もお気に入り。この3曲があればオレはどんな敵にも立ち向かえます(笑) それ以降はミドル〜スローテンポで序盤3曲に比べるとやや地味ですが、聴き込むとやっぱり狂っててカッコイイ。全体としてはギターの出番が大幅に増えているので、前作より骨太でメタリック。その分テクノっぽさは減退しています。とっくの昔に歌メロやらなくなったアルさんは、例によってガーガー騒いだりシャウトしたりで迫力満点。早くも貫禄さえ感じます。これが80年代の出す音とは思えませんよホント。
注目曲 : #9 「 Dream Song 」
 東洋風メロを奏でる女声ボーカルをフィーチャーしたアンビエント的な曲。工事現場から聞こえてきそうな低速ビートがかえって新鮮。ミニストリーの非ギター曲の中では特に好き。

In Case You Didn't Feel Like Showing Up

 ミニストリー史上初のオフィシャル・ライヴ作品。映像付きの VHS ヴァージョンもありますが、DVD 化はされていないようです。選曲は 3rd 『 The Land 〜 』と 4th 『 The Mind 〜 』から高速メタル系楽曲を3曲ずつチョイスで全6曲。これじゃ少なすぎ! けど内容は大満足ですぜ。話によると、このツアーはツインドラム、トリプルギターという鉄壁の布陣で回っていたそうで、おかげで音圧がスゲェ。「重い」というよりは「厚い」。音の厚みが桁違い。アレンジ自体は意外とスタジオ録音に忠実で、サンプリングとかも変わり無し。アルさんもばっちりシャウトしてて過激さはアップしてるので、ファンなら聴いて損しないと思います。「 Burning Inside 」 のキーが少し低くなってて、盛り上がりに欠けるところが玉に瑕か。


1990年
ライブ盤
注目曲 : #1 「 The Missing 」
 早くもオリジナルを凌駕しています。カッコイイ。

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 サイドプロジェクトが多いことで有名なミニストリーですが、その多くはこの頃生まれました。サイドプロジェクトとして最も有名な Revolting Cocks は85年に結成されたもので、ボーカルのアル・ジュールゲンセンを筆頭に、ベースのポール・バーカー、元 Dead Kennedys のフロントマンであるジェロ・ビアフラ ( Jello Biafra ) や Front 242 の Richard Jonckheere をはじめ、様々な人物が関わってきており、2008年にも新作をリリースするなど精力的に活動中です。おそらく次に有名なのがジェロ・ビアフラをボーカルに据えた Lard で、こちらはパンク寄りの音楽性。Pailhead は元 Minor Threat のイアン・マッケイ ( Ian MacKaye ) をボーカルにフィーチャーしたもので 、その他 Acid Horse 、PTP 、1000 Homo DJs などのプロジェクトはいずれも短命に終わりました。なお、アル・ジュールゲンセンは Skinny Puppy のアルバム 『 Rabies 』 の制作にも携わっています。



1992年
5th アルバム
推薦盤
ΚΕΦΑΛΗΞΘ (Psalm 69)

 セールス的にはピークを迎えたアルバム『詩篇69』。最初の2曲でガシガシと勢いをつけ、中盤では血圧急上昇、そして終盤はサンプリングやノイズまみれの無限騒音空間。まさに殺人マシン・ミニストリーの完成形ともいえる内容です。メタラーからの支持も熱い本作は、ギリギリでインダストリアルの領域を守りつつも、前作でもその兆しがみられたスラッシュ・メタルの要素をさらに強化。速さも重さもアップでアルバムまるごと凶器です。コレ聴くと得体の知れない高揚感がガンガン湧いて、自分が宇宙を支配する極悪最強の神にでもなったような錯覚に陥り、他人が弱っちく思えてきます(オイ)。どの曲も素晴らしいけど、圧巻なのは機械のような高速ギターリフに乗せてアルさんが早口加工ボイスでまくし立てるシングル曲 「 Jesus Built My Hotrod 」。4th アルバムの 「 Thieves 」 と並んでミニストリーを代表・象徴する名曲です。古参のファンにとっては「ヘヴィメタルと区別が付かない」との批判的な意見もあったようですが、インダスだろうがメタルだろうが、とりあえず鬼カッコいいアルバムでオススメ。
注目曲 : #1 「 N.W.O 」
 バシドコドコドコ バシドコドコドコ ジャーン!! ってな印象的なイントロ。一切コードチェンジせず直線的に進むのに全く単調に感じない不思議マジック。

Filth Pig

 前作で突き詰めた高速インダストリアル・メタル路線から一転、やたらスローでヘヴィになった作品。「遅い!」、「ダルい!」と当時の世のミニストリー支持者の期待を派手に裏切り非難ゴーゴーだったらしい。まあ遅いのは別にいいとして、聴いてて印象に残るようなフレーズもメロディーも打ち込みサウンドも少なく、見せ場に乏しいままダラダラとギターが鳴り続けるだけなので確かにダルい。前作の #6 #8 #9 などでみられたノイズ・ジャンク系の要素が強いので、アングラ界の大魔王 Swans を意識したのかな?と思ったりも。変拍子を駆使したリズム面なんかは興味深いし、ボブ・ディランのカバー曲 #9 「 Lay Lady Lay 」 も注目曲。でもやっぱり集中して全部聴くにはツライ。オレ的には狂人アルさんのことだから、にわかファンを消し去るために意図的に人の嫌がる作品をつくったのではないか?と思えて仕方が無いです(笑)


1996年
6th アルバム
注目曲 : #8 「 The Fall 」
 シングル曲。これは素晴らしーじゃないか。流れ星を連想させる鍵盤の美しい音は、冴えないこのアルバムを照らす唯一の光。・・・そんなことないか?

 『 Filth Pig 』 のリードトラック 「 Relord 」 の PV。なんかケネディ大統領暗殺をパロったような内容で、七変化するアルさんの変装ぶりは見もの(笑) どれも60年代の有名人らしく、ケネディ夫人はすぐ分かるけど、軍服姿はカストロかな? 白髪のサングラス姿はアンディ・ウォーホルっぽいし、殺人鬼チャールズ・マンソンにも扮しているらしい。ボサボサ頭のやつかな? たぶん他にも色々いると思われます。結局この PV は MTV では放送禁止になったそうですが・・・。

The Dark Side Of The Spoon

 「 Filth Pig 」 なジャケはこっちじゃね?と思う 7th アルバム。一言で言えば、脱インダストリアル・メタル化にとどめを刺す意欲作。まあ、この一枚でファン離れも決定的になっただろうな(笑) 今作も #1 「 Supermanic Soul 」(これは速い)とジャジーなアレンジが光る #5 「 Step 」 を除けばテンポはどの曲もスロー。ハイテンションなスラッシュ・チューンは期待できません。アルさんは気の抜けた声で歌う時間帯が多く、アルバム後半はミニストリーにしては珍しい寂寥感というか、惨めな雰囲気が充満しています。前作同様ダルいアルバムですが、ここではサックスやバンジョーの音色、中近東風の女声サンプリングを導入するなど、今までに無い試みが散りばめられています。見せ場はそれなりに用意されているので、実験作と割り切れば、決して悪くないかも。ファンならどうぞ。


1999年
7th アルバム
注目曲 : #7 「 Nursing Home 」
 人を食ったようなサックスの鳴らし方が強烈。特に後半、一時停止直後の「プゥ!」ってやつ、アレが良い。



2001年
コンピレーション盤
Greatest Fits

 いわゆるベスト盤はコレが初めてで、主に 3rd 『 The Land Of Lape And Honey 』 〜 7th 『 The Dark Side Of The Spoon 』から計13曲(少ね)を収録した一枚。とりあえず入門編としては最適ですが、名曲 「 Burning Inside 」 や神曲 「 Revenge 」 (オイ)など抜けて欲しくない曲が沢山ある・・・というのは各所で指摘済み。まーでもミニストリーは1枚の CD では到底語りつくせない功績がある、という方向で理解させていただいてマス。映画 『 A.I. 』に提供された新曲 「 What About Us? 」 をはじめ、「 So What 」のライヴ・ヴァージョン、「 Reload 」 の12インチ・ヴァージョン、ブラック・サバスのカヴァー曲 「 Supernaut 」 などオリジナル・アルバム未収録の曲も収録されているので、オリジナル・アルバム全部聴いちゃったファンも手に入れたくなるアイテム。
注目曲 : #5 「 So What (Live) 」
 ライブ音源ですが音質が非常にクリアーで臨場感あふれるのでオリジナルより断然良い。右側のきゅるきゅるノイズと左側の下降リフのコンビネーションが素晴らしく奇麗。終盤のバスドラ連打もカッコイイ。

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Animositisomina

 Sanctuary レコードに移籍し、ライブ盤 『 Sphinctour 』 を発表、そして久々のスタジオ作となる本作。タイトルは「敵意」「憎悪」を意味する ”animosity ” という言葉を前からと後ろから書いたものをくっつけた造語で、「アニモシティシモニア」と読みます。作品に歌詞が載ったのは今回が初めてで、後になって思うことには、このメッセージ性の重視は、次作からの反ブッシュ・コンセプト・アルバムの登場を予感させなくもない。んで、このアルバムですが、全盛期のパワーとスピード感が少しカムバック。前2作品のダラダラ感は払拭され、カチッとまとまったパワフルなロックアルバムに仕上がりました。アルさんも吼えること多いし、歌メロも明快でメリハリが向上。そしてナイフのように硬く尖ったこの音質。彼らならではの殺気が失われていないあたりはさすがで、そこいらのヘヴィロックとは一線を画しています。例によってドラミングも複雑奇怪で、冒頭の直線9拍子(?)に始まり、「 Psalm 69 」 を彷彿とさせる12/8拍子の曲をいくつか挟みながら、後半は変拍子で揺さぶりかけ、最後はカオス状態。それもあってか、デタラメに速い曲や特殊効果は無いのに、案外楽しめました。


2003年
8th アルバム
注目曲 : #6 「 The Light Pours Out Of Me 」
 70年代末の UK ニューウェイヴバンド Magazine のカヴァー曲。サビの上昇コード進行がシブいよね〜。いつものミニストリーと違ってどこか素朴で開放的。とはいえ原曲と比べると格段にマッチョですけど。



2004年
9th アルバム
Houses Of The Mole

 3rd アルバム以来アルさんとコンビを組んでバンドを支えてきたポール・バーカーが、前作のツアーを最後に脱退。これに伴い実質アルさんのワンマン・プロジェクトとなって制作されました。前作から約1年という短いインターバルで発表されたこの作品ですが、アルさん曰く「バーカーの脱退で俺のケツにギアが入った。それで俺は、荒々しいパンク・ロックのレコードを作ろうって決心したんだ」とのこと。ごもっとも、こりゃあスゴイ!『詩篇69』の頃に勝るとも劣らぬ速度、そして破壊力。前3作品が嘘みたいな快速スラッシュメタルを繰り広げております。リズムトラック等における打ち込みの比重がアップした点も原点回帰の表徴でしょうか。粘り強く待っていたファンにとっては嬉しい復活作。一つ難を言わせてもらえば、『 Filth Pig 』 や 『 The Dark Side 〜 』の頃みたいな創意工夫や新鮮味には欠けるな。あと当時の試行錯誤の成果が、このアルバムで結実してると言えるかも微妙。まあでも、このスラッシュっぷりは無条件にカッコイイ。
 本作は反ブッシュ三部作の第一章と位置づけられていて、何箇所かに大統領の肉声がサンプリングされてます。考えてみると KMFDM も反戦アルバム 『 WWIII 』 を発表したばかりで、翌年には NIN のトレントも 『 With Teeth 』 の先行シングル 「 The Hand That Feeds 」 でブッシュ嫌いを公言してる。ブームですな。
 もう一つ、ネタバレですけど、このアルバムには変人アルさんらしい仕掛けが盛り沢山。隠しトラックの23曲目には 「 No W 」 の別バージョン 「 詩篇23 」 なんてモノが収録されてるし、無音トラックを含めると収録曲数は全部で69だったりする。楽曲の雰囲気からしても本作は 『 詩篇69 』 のセルフ・カヴァー作品と言えましょう。
注目曲 : #6 「 WTV 」
 激速 TV シリーズの新曲ってやつ。スタスタのスラッシュリフに乗せて Stop & Go でのた打ち回る変態楽曲。サンプリング使いまくり。

 「ブッシュ、否」な快速リードトラック 「 No W 」。「 Psalm 69 」 を彷彿とさせる物々しい合唱をイントロとラストに配置したゴリゴリのスラッシュメタルです。これは久々にカッコイイ! テンション上がるな〜。因みにタイトルは 「 N.W.O 」 のアナグラムにもなってるんですね。



2004年
コンピレーション盤
Early Trax

 こちらは初期ミニストリーの12インチシングルとそのリミックス、および未発表音源の計12曲を収録したコンピレーション盤。そもそも85年には 『 Twelve Inch Singles 1981-1984 』 という8曲入りの初期シングル集がリリースされていまして、初期ミニストリーを熱く支持したい管理人としてはかなり欲しかったのですが、リマスター済みで曲数も多いこっちのアルバムを選びました。これで 『 Twelve Inch Singles 1981-1984 』 収録曲が全て網羅されているのかというと、否、「 Cold Life 」 が抜けてやがる。あーめんどくせー。もういいや。収録曲は大半が時間的に 1st 『 With Sympathy 』 と 2nd 『 Twitch 』 の間に作られたものなので、サウンド的にも両者の中間か、あるいはやや『 Twitch 』 寄りでしょうか。シンセの味付けはまだエレポップ風といえますが、アルさんの歌唱は基本ざわざわ声だし、ビートのタイトさに関しても既に EBM の域。特に未発表曲の 「 He’s Angry 」 と 「 Move 」 の攻撃性は特筆に価します。が、しかしですよ、80〜81年の最初期の音源である 「 I'm Falling 」 と 「 Overkill 」 の2曲は全くの別もの。シンセとギターを融合しながら、ノリノリで疾走ポジパンしております。しかもゴシカルな雰囲気が狙いすぎで激チープ。これじゃ Alien Sex Fiend と変わらんじゃんか!(笑) いやはや、この2曲は予想外の発見でした。
注目曲 : #11 「 I’m Falling (Alt Mix unreleased 1980) 」
 ノリノリのリズム、うねるベース、リロリロのキーボード。この曲イイ!

Rio Grande Blood

 友人 mon さんから音源頂いたミニストリーの 10thアルバム。2005年リリースのコンピ盤を最後に Sanctuary レコードから離脱し、今度は Megaforce Records との提携の下、アルさん自ら 13th Planet Records なる新レーベルを設立。そこからリリースされました。本作は反ブッシュ三部作の第二章という設定で、おお、ジャケに大統領の顔写真を堂々と使用してるやんけ。これはもうアナーキストとしか表現の仕様がありません、アルさん。テキサス州のレコードショップの店頭でちゃんと販売できたのか心配になってしまいますが、作風としては前作よりさらに速く、激しく、硬質に。高速2ビートは当たり前、ブラストビートも当たり前、尋常じゃないスピードを弾き出しています。これは素晴らしい。例によってブッシュ声のサンプリングも激多用。アルさんは歌メロなしで、ひたすらシャウト。間違いなくミニストリー史上最も過激な内容と言えます。あとジャケの背景を見れば想像つくように、歌詞はアラブ石油ネタが多いようで、ついでにメロディーに関しても所々アラブ調。荒れ果てた灼熱の砂漠の風景・・・この辺りが前作との微妙な違いです。ミニストリーの最終作(残念!)となる次回は一体どんな作品を届けてくれるのか早くも楽しみですが、狂人アルさんのことだから 『 Filth Pig 』 的なオチを付けてくれることを期待して止みません。


2006年
10th アルバム
注目曲 : #6 「 The Great Satan 」
 前作収録 「 Warp City 」 系の快速チューン。バスドラのドコドコ感がイイ。このアルバムで一番お気に入り。



2007年
11th アルバム
The Last Sucker

 アンチ・ブッシュ三部作の完結編にして、最後のスタジオ作と公言されリリースされた 11th アルバム。同年10月に亡くなった元 Killing Joke のベーシスト Paul Raven や Fear Factory のボーカル Burton C. Bell など、ゲストが多数参加しています。んでもって、期待の中身の方ですが・・・何つーかもー全然変わっちゃいねー(笑) 前々作・前作に引き続き、猛烈なスラッシュリフとアルさんのガラガラシャウトでガンガン押しまくる快速ハードコア(ヘヴィメタル)アルバムです。曲は #6 #7 #8 あたりが激速、それ以外もそこそこ速め。今作ではドラムが不在で、全編打ち込みに頼っているため、リズムトラックは以前にも増して機械的な感触がします。あとギターソロが若干増えたかなって思うのが特徴でしょうか。昔どこかで聴いたようなフレーズが目立ち、さすがに新鮮な感動は湧いてきませんけど、まあやっぱりミニストリー好きだし、アルさんお元気で何より。10分以上延々と続く、焼け野原なエンディング曲 #11 『 End of Days Part Two 』 も良かったです。
注目曲 : #8 「 Roadhouse Blues 」
 本作の目玉?ドアーズの曲の激速ドコドコカバー。完全にミニストリー風に料理されててブルース感無ーし(笑) この曲は 2008年リリースのカバーアルバム 『 Cover Up 』 にも収録されました。