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New Order


 英国はマンチェスター出身、ニューウェイヴ・ロックを代表する超大御所バンド。ロックとダンスの融合という新しい手法を試み、80年代末には「マッドチェスター」や「セカンド・サマー・オブ・ラブ」といった音楽シーンを牽引する存在となり、現在もロックからハウス/テクノ界に至るまで、数多くのミュージシャンに影響を与え続けています。
 彼らは演奏力の低さにも定評があり、とりわけバーナード・サムナーの音程の怪しさはスタジオ・レコーディング・アルバムでも十分体感できます。けれども、このダメっぷりもご愛嬌となって人気の一因。「いやいや、この頼りなさがイイんだよぉ」 とか訳のわからんことを言い出した日にゃ、もうあなたも立派なニュー・オーダー狂徒です(笑)
 そんな彼らの歴史は、やはり前身のバンド Joy Division 抜きには語れません。本人たちもウンザリでしょうけど・・・。

   Joy Division 初のアメリカ・ツアーを翌日にひかえた 1980年5月18日、日曜日、 ボーカルのイアン・カーティス ( Ian Curtis ) が衝撃の首吊り自殺を遂げてしまう。これ、ロック史上まれにみる超ウルトラスーパー大迷惑。結局、後ろでギターを弾いていたバーナード・サムナーが一歩前に出て、恐る恐るマイクを握ったことにより、ニュー・オーダーは誕生しました。
 当初のメンバーは、ボーカル&ギターのバーナード・サムナー ( Bernard Sumner )、ベースのピーター・フック ( Peter Hook )、ドラムのスティーヴン・モリス ( Stephen Morris ) の3人で、すぐにスティーヴンが彼のガールフレンド(で後に結婚することとなる)ジリアン・ギルバート ( Gillian Gilbert ) をキーボード奏者(および第二のギタリスト)としてバンドに引き入れ、4人編成へ。バンドは 「 Blue Monday 」 などヒット曲を連発し、80年代後半には本国イギリスのみならず、世界を代表する偉大なグループへと成長します。
 90年代に入るとメンバー間の仲たがいやソロ活動の活発化により、ニュー・オーダーとしての活動は停滞しますが、2001年には8年振りとなるアルバムを発表し、その後も順調に活動を進めてきました。ところが、2007年頃から再びバーナード・サムナーとピーター・フックの不仲が目立ちはじめ、解散騒動が勃発。で、2008年現在、バンドは正式に解散・・・したのかな?? わからん! どっちでもいいや。


左 : バーナード・サムナー
中央上 : ピーター・フック
右 : スティーヴン・モリス
中央下 : ジリアン・ギルバート

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1981年
1st アルバム
Movement

 イアン・カーティス亡き後の、彼らの再出発アルバム。思うに、ボーカルがバーナード・サムナーに変わってしまった点を除けば、JD 時代と大差ありません。特段の盛り上がりやポップな歌メロも無いまま、全35分があっちゅー間に終了する、ダークで地味なポストパンクです。シンセのアレンジや変則的なリズムトラック(基本的に生ドラム)などには、ダンス/テクノ化の片鱗が表れていますが、あくまで「蝶」になる前の「サナギ」という段階であって、ディスコで踊れそうな曲は無し。バーナードの歌唱も次作以降と少し違って、何つーか自信無さげで、声が曇ってて無表情。あと、このアルバムに限って、部分的にベーシストのピーター・フックもメインボーカルを握っていたりも(気付かねぇ)。そんな不安定な状況から察するに、彼らもこの時点では自分たちの音楽と将来に対する明確なビジョンが描けてなく、とりあえず一枚作ってみた、というのが実情だったのではないでしょうか。したがって、これがニュー・オーダーだ!ってな音をお求めなら、別に聴く必要はなさそう。逆に言えば、薄気味悪いニュー・オーダーを聴けるのは本作だけ。もちろん個人的にはそこそこ好きです。でも、デビュー・シングル 「 Ceremony 」 に匹敵するカッコイイ曲は期待できません。
注目曲 : #7 「 Doubts Even Here 」
 シンセの泣きのメロディーを注入した JD 系バラード。終盤で現れる女声の語りはギリアン・ギルバートの声。

Power, Corruption & Lies

 シングル曲 「 Blue Monday 」 の爆発的大ヒットを経て、大胆なエレクトロ化を試みたスタジオ2作目。当時の NY ディスコ・シーンから栄養を吸収し、彼らの才能が一気に開花した記念碑的作品です。ジャケットもそれを祝うかのように花が咲き乱れてますね。そして背景のグレーは JD 時代の象徴(未確認。いや、あながち・・・)。仲間の死を乗り越えたのでしょうか、躍動するリズムも煌く電子音も希望に満ちてます。リードトラック 「 Age Of Concent 」 の視界が一気に開ける感覚、牽引力抜群のベースメロ、マジ最高です。そんな明るさを覗かせながらも、ただ能天気なエレ・ポップに陥ることなく、常にイギリス的な陰影を引きずっているのがニューオーダーの醍醐味。電子音にまみれて懸命にメロを奏でるピーター・フックの高音ベースもイイ味出してます。まあ、曲単位でみた場合 「 Blue Monday 」 の従兄弟のような曲が多く、バラエティーの面ではもう一歩だし、アレンジもまだ十分に洗練されているとは言えないかも。それでも当時最先端のダンス・ロックは追体験でも新鮮な響き。かの電気グルーヴの石野卓球も、本作のリズムトラックの数々を「現在でも ' 使える ' リズムだ」と大絶賛。


1983年
2nd アルバム
注目曲 : #4 「 5-8-4 」
 昆虫観察のような前半、ぴょんぴょん跳ね回る後半。石野卓球のお気に入り曲らしい。

 83年の ダッ、ダッ、ダダダダダダダダ大ヒットシングル〜!!「 Blue Monday 」 の PV。この曲には様々なバージョンがありますが、88年と95年にはそれぞれ 「 Blue Monday 1988 」、「 Blue Monday-95 」 というリミックス・シングルがリリースされています。

Low-Life

 ジャケットにはメンバーの顔写真は使わないという伝統を打ち破って、何故かバンドで一番影の薄いスティーヴンの顔を起用した3作目。個人的には、イケメン☆バーナードの顔にして欲しかった。で、肝心の中身はというと、エレクトロ路線がしっかり板に付いてきて、曲1つ1つのクオリティも抜群。2曲目の 「 The Perfect Kiss 」 はバンド史上初めてアルバムからカットされたシングル曲で、色彩豊かなディスコ・チューンです。序盤こそは前作の流れを引き継ぐかのような晴れ晴れとした雰囲気ですが、この曲以降は徐々に日が陰っていき、全体としては曇り空というアルバム展開。サウンドは幾らか迫力が増してきて、ピーター・フックのベースの力強さ、バーナードの頑張り感(笑)も前作以上ではないでしょうか。特に JD 時代を彷彿とさせるダークサイケなギターロックチューン #4 「 Sunrise 」 のカッコ良さときたら! 個人的にニュー・オーダーの最高傑作については、このアルバムに一票入れさせていただきたい。


1985年
3rd アルバム
注目曲 : #5 「 Elegia 」
 前曲のムードをさらに深めるようなインスト曲で、芸術的に高く評価されています。#3 → #4 → #5 と深まっていく展開が素晴らしい。



1986年
4th アルバム
Brotherhood

 このアルバムはほぼ前作の延長上です。だから、あんま書くことないな〜。(オイ) ・・・んまあ、強いて言うなら、2nd、3rd よりは純粋なギターロックが多め。最初の5曲目まではテクノっ気ゼロのノーマル・ロックばっかで一瞬焦るが、名シングル曲の #6 「 Bizzare Love Triangle 」 からはしっかりピコピコやっているので、ホッと一安心。特別なインパクトはないけど、ファンを裏切らない手堅い内容です。
注目曲 : #9 「 Every Little Counts 」
 おい、何クスクス笑ってんの?バーナードさん。メロディーが「かえるの歌」並にやる気ナシ。でも終盤がカオティックでスゲェや。

Substance

 ニュー・オーダー初のベスト盤 2枚組で、ここまでの12インチ・シングル AB 面の音源を中心に収録。こうして並んだ曲を眺めると、アルバム作品ではギターロックもやるけどシングル作品ではテクノ/ダンス・チューンを専門にやる、というバンドの性格が垣間見えます。A面の名曲群がズラリと並ぶ Disc1 に比べ、Disc2 は B面を集めた「陰」の部分なので地味ではありますが、幾つか良い曲もあります。ただし B面とかいいつつ A面をインストに料理したものが多かったりするんだよなー。 ところで解説に書いてあることには、ニュー・オーダーのシングル曲は意外なことに一部の例外を除いてチャート的にはパッとしていません。UK ナショナル・チャートの Top10 に入ることすら珍しかったり。でもこのアルバムは米国でも大ヒットしたそう。前期ニュー・オーダーの歴史を駆け足で巡ることができる入門用に最適なアイテムで、ファンにとってもやっぱりマスト・アイテム。


1987年
コンピレーション盤
大推薦盤
注目曲 : Disc1 #12 「 True Faith 」
 本作に先立ってリリースされた87年のシングル曲。Pet Shop Boys の二ール・テナントも驚愕した、ニュー・オ−ダーの代表曲。それどころか、80年代最強の哀愁ディスコチューンではないかと。この曲はキーが低いもんでバーニーも安心(笑)

 上述の 「 True Faith 」 の PV。やっぱりこのプロモ何度見ても笑っちゃう。内容が曲調に全く合ってないのに、リズム感だけはバッチリ合わせてる。イントロの殴り合いとか最高。あと ● ▲ ■ の積み上げられない積み木も地味にツボ(笑) 突っ込まずにはいられねぇ。

Technique

 ベスト盤 『 Substance 』 のリリースで一つの区切りをつけた彼らが満を持して世に放った、全英1位獲得アルバム。これを最高傑作に推す人も多いです。制作は当時マンチェスターのクラブシーンを席巻していたバレアリックの本場であるスペインのイビザ島にて行われており、エネルギッシュで開放的なアルバムの雰囲気。彩度やたら高めなジャケ絵も象徴的。今までの内向内省的ムードとは違う、快楽的なノリ重視のビート音楽満載です。ギター系ロック・ナンバーでは、初期のようなポストパンクテイストは感じられず、どこか余裕さえ窺えます。この数年間で一気にモダンなステージへと進化していったニュー・オーダーですが、シングル曲 「Round & Round 」 等ではピーター・フックの高音ベースやバーナードの繊細な哀愁メロは健在で、これまでの持ち味も存分に引き継がれた好作。
 ところで話によると、本作の大半の楽曲はスティーヴンとギリアンの二人によって作られ、残りのバーニーとピーターは地中海の楽園で夜遊びに明け暮れていたらしい(笑) それがきっかけでバンド内に軋轢が生じ、次のアルバムの完成までは4年間待たねばならないのでした。


1989年
5th アルバム
注目曲 : #8 「 Vanishing Point 」
 ダンスビート全開の割には落ち着きのある内容。メロディーも充実。ニュー・オーダーのアルバムは、シングル曲以外は概ねグダグダなんですが、たまーにこうやって優れた非シングル曲に出会えるのも乙なもの(失礼)

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1993年
6th アルバム
Republic

 長年に渡って所属したレーベル、ファクトリーの身売りやメンバー間の仲たがい、 ソロ活動など色々あったニュー・オーダーが90年代に唯一残したオリジナルアルバム、6作目。 作風としてはやはりテクノ要素は強めながらも、「ダンスビート先にありき」で娯楽性重視だった前作とは違って、 今作では落ち着きを取り戻し、本来の持ち味である「歌」を見つめ直した感じです。 うーむ、しかしねぇ、キメ曲が冒頭の 「 Regret 」 一本だけで後続が失速気味。悪くはないんだが、 どの曲も 「ザ・ニュー・オーダー」 って感じの曲ばっかで、さすがのオレも飽きてくる(笑)  つまるところ、意外性や驚きに乏しいのですよ、このアルバムは。まあオッサン達に新発明を要求する方が贅沢だな。 だからその意味では、彼らが時代の先頭を走っていたのは前作が最後なのかもしれん。とは言いつつも、しっかり全英1位獲得。
注目曲 : #9 「 Times Change 」
 バーニーはサイド・プロジェクト Electronic で披露したラップをこっちでもやってしまいました。でもテンション低っ。

Get Ready

 もうダメなのか、ニュー・オーダー。と思わせといて、8年ぶりに大復活をしてみせた 7th アルバム。 きっと古参のファンならもうそれだけで狂喜乱舞。後追いで聴き始めた私がこのアルバムに大きな価値を見出しているか、 と言われたら正直微妙ですが、前作 『 Republic 』 よりは好きです。特に前半はエンジンがかかったかのようにギターが元気に鳴り響き、 さすが8年間充電しただけのことはあるな、いや、むしろ若返ったのでは、とさえ思えてきます。ピーター・フックのベースもブイブイいってるし、 ニュー・オーダーにしては割とラウド。フッキーいわく、「ジョイ・ディヴィジョンみたいに、もう一度ギター・サウンドの音を作るんだ」とのこと。 確かにテクノ・ダンス的なアレンジは今回は極力控えられてます。まあ、一般的な UK ロックですわ。もちろんメロディーセンスは衰えていません。 そういや、バーニーの歌唱は今さらになって安定してきた感も。


2001年
7th アルバム
注目曲 : #2 「 60 Miles An Hour 」
 シングル曲。バーニーの晴れない歌メロ、ピーターのブイブイ高音ベース、間奏部のぺらぺらシンセ、その後にちょこっとギターソロ。まさに完全無欠。これぞニュー・オーダー。



2002年
コンピレーション盤
推薦盤
International

 この時点までのニュー・オーダーのキャリアを総括する濃厚ベスト盤。 「末期ニュー・オーダーの曲も入ったベストが欲しいよー」 な人はコチラをどーぞ。 例によって曲はリリースの古い順に陳列。前半〜中盤までは哀愁を湛えたシンセ中心のダンス系の曲で、 後半の曲はエレキギターと生ドラムの音が主役となる無難な大人のロックといえます。感想としましては、 前半〜中盤はダサ・カッコいいけど、後半はダサくもないしカッコよくもない。これはもちろん個人的な感想ですよ。 後半だって洗練された名シングル揃いでそれはそれで良いです。「 60 Miles An Hour 」 とか大好きだし。 でも、それらにはどうも 「ニュー・オーダーでなければならない理由」 のようなものを見出せないのです。 乱暴に言えば普通の UK ロック。たぶん私は彼らの80年代の曲にみられる 「深刻さ」 と 「開拓精神」 の奇妙な共存に心惹かれるのだと思います。
注目曲 : #14 「 Here To Stay (Radio Edit) 」
 愛弟子ケミカル・ブラザーズとのコラボレート・シングル。映画 『 24アワー・パーティー・ピープル 』 のサントラに収録。良質の高速ダンス・チューンです。ファンはこの曲のためにアルバム買わされるのかな。

Waiting For The Sirens' Call

 はい、お疲れ様です。通算8枚目のオリジナル・アルバム、目下最新作です。何も言うことはありません。全曲ニュー・オーダーです。 どうも有難うございました。しかし、これだけは触れておかなければならない。 日本盤にボーナス・トラックとして収録されているクラフティの日本語バージョン。 これ、マジで激ヤバ必聴!!(ファン限定) あのバーニーがいきなり「アル朝キミハ目ェガサメテェ〜」とか歌い出すから、腹かかえてワラッタ。 しかも途中から何言ってるか分かんねーし(笑) ややっ、笑っちゃいけないな。こんな辺境の島国のファンのためにサービスしてくれるなんて、 バーニーいい人すぎるよ。この調子で、全シングル日本語バージョンのリミックス・アルバムも作ってくれ! オレ絶対買うからさ〜。


2005年
8th アルバム
注目曲 : #9 「 Guilt Is A Useless Emotion 」
 グダグダな中盤の後にやってくるノリノリビート。俄然集中力が回復(笑) やっぱダンスビートは即効性あるよな。なお、この曲は本作からの 4th シングルで、#10 「 Turn 」 が 5th シングル。凡作のくせしてよく切るなぁおっさん(何様)