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The Cure


 前身のバンド Malice そして Easy Cure を経て1978年に結成された UK ニューウェイヴ超大御所バンド。ボーカル&ギター担当のロバート・スミス ( Robert Smith )、ベースのマイケル・デンプシー ( Michael Dempsey ) 、ドラムのローレンス・トルハースト ( Laurence Tolhurst ) の3人が The Cure のオリジナルメンバーですが、ロバート・スミス(以下ロバスミくんに省略)以外のメンバーチェンジが激しく、現在に至るまでバンドは実質的に彼によるワンマン経営です。Siouxsie & The Banshees のスージー・スーがヴィジュアル系の母だとしたら、ロバスミくんはヴィジュアル系の父ってところか。どうか。いい年こいてるのに、頑なにゴスメイクに拘り続けています。永遠のカルトヒーロー万歳! バンドは彼の度重なる「解散予告」にもかかわらず、今もなお第一線で活動中で、2008年10月には新作もリリース。

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1979年
1st アルバム
Three Imaginary Boys

 前年のデビューシングル 「 Killing An Alab 」 に続く彼らの記念すべき 1st アルバム。これぞポストパンクだぁぁ!と叫ばんばかりのミニマルでクールでちょっと捻くれたバンドサウンドが35分間。さすがに今聴くと音はスカスカですけど、同時期の Joy Division も Wire もスカスカですもんねぇ。後のバンドのイメージを決定付ける憂鬱メロはここには少なく、むしろロバスミくんの音程をなぞらない歌唱が一部聴けたりと、アクティブでパンキッシュな曲調もあります。同じバンドサウンドを用いながらパンク以前ともパンクそれ自体とも違う独自の個性が既に確立されており、真の意味でポストパンク時代の扉を開いた名盤ではないかと。なお、ロバスミくんはこの頃バンシーズのサポートギタリストも務めてました。
注目曲 : #1 「 10.15 Saturday Night 」
 デビューシングル 「 Killing An Alab 」 のB面曲。終盤で飛び出す殺伐とした単音ギターのフレーズが印象的。

Seventeen Seconds

 前作リリース後に脱退したベーシスト Michael Dempsey の後任に Simon Gallup、そして新たにキーボード担当の Matthieu Hartley を迎えて4人組で制作された 2nd 。この頃は無駄を一切廃したサウンドを追求していたようで、慎ましいギターとベースの旋律に導かれてロバスミくんの陰鬱な歌メロがあてもなく漂う、ひどく元気の出ないポストパンクアルバムです。徹頭徹尾一筋の光すら差さすことなく内へ内へと沈み込む世界観。この暗さは「暗い」じゃなくて「ちっとも明るくならない」と表現した方が伝わる気がします。エレキギターは音圧低すぎで、もはやアコギ同然の線の細さ。エフェクトかけたり鍵盤(ピアノ)メロを奏でたりするキーボードもとことん地味な仕事ぶり。ドラムの仕事もリズムマシンのように無表情で、本当に人力か?って疑いたくなるような淡々とした刻みっぷり。削ぎ落とされ研ぎ澄まされた繊細なサウンドからジワリと滲み出るメランコリックな感情、これぞ初期キュアーの魅力なのです。が、馴染めなければ単にスカスカロック。
 あと当たり前だけど、メンバーの写真みなさん若い! 特にロバスミくん、ノーメイクで痩せてるから別人状態。でもアゴの微妙な割れ具合を見て「あ〜やっぱりロバスミくんだ〜」って納得(笑)


1980年
2nd アルバム
注目曲 : #2 「 Play For Today 」
 ライブでのファンの合唱でお馴染みの名曲。この前奏のギターリフは実にカッコイイ。



1981年
3rd アルバム
Faith

 バンドに加入したばかりのキーボーディスト Matthieu Hartley が前作リリース後いきなり脱退。まあ、あんな地味な仕事しかさせてくれなかったら辞めたくもなるわな〜。ということでトリオ編成に戻った 3rd アルバム。基本的にモノトーンで質素なポストパンクであることには変わりありませんが、キーボード担当がバンドを去ったくせに、今回もシンセをそこそこ使ってみたり。前作みたくひたすら内向的&閉鎖的だったイメージからすると、このアルバムでは何曲かで外向きのエネルギーが僅かばかり確認可能で、中でも #2 「 Primary 」 の疾走感はなかなかにパンキッシュ。あと次作ほどではないにせよ、リズムトラックに一工夫あって生き生きしている様子。でもやっぱ全然明るくない。聴く者を底なしのメランコリアへと誘う、ミニマルでダークな初期キュアー節です。
注目曲 : #9 「 Carnage Visors 」
 ラストは27分間に渡って特段の見せ場も無いままギターとベースとシンセの複層的な鬱メロがたらたら流れるインスト曲。長けーよ。でもこの曲は本来はボートラで、ライヴの際の前座(サポート・アクト)に代わる存在として作られた映像作品のサントラだったそうです。

Pornography

 引き続き同じ面子のトリオ編成で制作された 4th アルバムは、2nd に始まる三部作の完結編とのこと。ガイドブック等ではしばしば「カラフルな中期キュアーの幕開け的作品」として紹介されます。が、実際聴いてみて「そうかぁ?」って思いました。シンセストリングのベールを強調したりと確かにアレンジの幅は広がってるし、演奏の迫力(≒ ギターの音圧)も付いてきてますけど、相変わらずロバスミくんの鬱メロは徹底されているし、サウンドの暗黒度はむしろアップしている気もします。今までの自閉的なイメージと比べると、より積極的にダークさを醸し出していて、それゆえこのアルバムはジャンル的には「ネオサイケ」ではなく「ゴス」の域に足を踏み入れているのではないかと(ロバスミくんのゴスメイクも加速/笑)。そして何より特筆すべきは、タム頻出の畳み掛けるようなリズムトラック。バンシーズの 2nd アルバム 『 Join Hands 』 にしてもそうですが、スネアの出番を控えめにしてドンドコタムタム鳴らしまくることによって生まれる独特の息苦しさ。この効果も以前の作品から差別化された特徴ではないでしょうか。


1982年
4th アルバム
注目曲 : #3 「 The Hanging Garden 」
 不吉なタイトルのシングル曲。邦題は「首吊りの庭」。恐怖を煽るようなタム連打が曲を通して続く一方、スネアは全くと言っていいほど鳴りません。あと珍しくギターよりベースの存在感が光ってる。

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 バンドは82年から83年にかけてシンセを大胆に導入した3枚のシングル曲 「 Let's Go to Bed 」 「 The Walk 」 「 The Lovecats 」 (通称「ファンタジー三部作」と呼ばれ、後にコンピ盤 『 Japanese Whispers 』 に収録された)をリリース。従来の暗鬱な音楽性に慣れ親しんでいたファンの間では賛否両論を呼んだものの、バンドが新たな局面へ向かおうとしていることが窺える革新的な内容でした。
 この時期ロバスミくんは再びスージー&ザ・バンシーズの一員となっており、6th アルバム 『 Hyaena 』 では正式なギタリストとしてクレジットされ、ツアーにも参加していました。またロバスミくんはバンシーズのギタリスト、スティーヴン・セブリンらと組んだサイドプロジェクト The Glove を立ち上げ、『 Blue Sunshine 』 をリリース。そんなこんなでキュアーの解散が囁かれたそうですが、ロバスミくんは無事キュアーに戻り、5th アルバムの制作に取り掛かります。



1984年
5th アルバム
The Top

 恒例のメンバーチェンジを経て今度は5人編成となりました。このアルバムは上述の「ファンタジー三部作」の流れを継承したポップかつ実験的な作風で、リコーダーの音色や民族音楽の要素、さらには8ビート以外のリズムも積極的に取り入れたりと、これまでのダークサイケなバンドのイメージとは一線を画する内容です。ロバスミくんがバンシーズに所属していた影響か、小洒落たアレンジセンスやにわかエスニックなムードが 『 Hyaena 』 に似てる似てる。てな訳で、キュアーの脱ゴス&ポップ化はスジバンのお陰なり(断言) 事実、後にスージー姉さんは「あいつはバンシーズの美味しい部分だけ頂いて去っていったのよ」とロバスミくんを非難したとかしないとか。で、話は逸れましたが、このアルバム、何かと創意工夫をめぐらしている割には、ぶっちゃけ曲一つ一つがあまり耳に残りません。これまた 『 Hyaena 』 同様だな。ジャケがカラフルでキレイなのが救い。
注目曲 : #6 「 The Caterpillar 」
 ピアノと弦楽器の調子外れな音で始まるシングル曲。本作の白眉。

The Head On The Door

 新しいドラマーに Boris Williams を向かえ、Simon Gallup がベーシストに復活しての 6th アルバム。ロバスミくんはスジバンでの活動に区切りをつけ(追い出されて?!)キュアーに専念、黄金期キュアーのラインナップが揃いました。作風としてはさらにポップセンスに磨きがかかり、まずはニュー・オーダーを彷彿とさせる爽やか系ニューウェイヴな 「 In Between Days 」 で威勢良くスタート。#2 「 Kyoto Song 」 は文字通り京都ソング(てゆーか演歌)で、続く #3 「 The Blood 」 ではのっけからフラメンゴギター炸裂ジャカジャカジャン!! その後も個性溢れる曲のオンパレードで、アルバム展開なんか気にしない、もーやりたい放題。ここまでくると、まるで縁日のバラバラ屋台状態です。しかしこのアルバムは前作と違って、曲1つ1つの完成度が高く存在感も十分、歌メロもキャッチー。そして的を得たアレンジの数々。素晴らしいことに捨て曲無いですよ。前作では空回り気味で終わった実験的な試みが、本作ではことごとく成功した感があります。多彩すぎて全体の統一感に欠けるので、キュアーの代表作と位置づけるには貫禄不足ですが、ロバスミくんの才能が開花した中期の傑作ですな。英国のカルトバンドに過ぎなかったキュアーが、スタジアム級の世界的ロックバンドへの階段を上がり始めるのはこの辺りから。


1985年
6th アルバム
推薦盤
注目曲 : #7 「 Close To Me 」
 キーボードのコロコロした可愛げなアレンジが冴えるシングル曲。

 『 The Head On The Door 』 の8曲目 「 A Night Like This 」 。個人的にキュアーで一番好きな曲です。比較的王道なミドルテンポギターロックですが、哀愁を湛えた歌メロが素晴らしく、後半で現れるサックスも良い。この曲は実は76年頃に既に作られていたようで、前身のバンド Malice のレパートリー曲だったらしい。しかしロバスミくんのパジャマみたいな格好は何とかならんのか。

Staring At The Sea: The Singles 1979-1986

 ここまでのキャリアを振り返る、前期キュアーのシングルベスト。曲がリリースの古い順に並んでいるので、作風変化の軌跡を辿れるのは勿論のこと、オリジナルアルバム未収録曲も多数収録で、聴く価値ありまくり。全部で17曲収録されているこのアルバム、#1 〜 #10 の「モノトーンの質素な前半」と、#11 〜 #17 の「色味のある工夫の後半」に二分できそうですが、こうやって集めてみると初期のシングルはドラムがイソイソと刻むハイスピードな曲が多いです。後半の曲はシンセや弦楽器が実験的に導入されていてポップな印象。ただしポップでも薄暗いポップさで、お部屋の中で遊んでいるイメージ。後期ベスト 『 Galore 』 収録のポップソングとは別物です。当時の音楽シーンの最先端を行く珠玉の名曲がズラリ並ぶオススメの一枚。やっぱキュアーは初期キュアーですよ。


1986年
コンピレーション盤
大推薦盤
注目曲 : #3 「 Boys Don't Cry 」
 怪人マンソンさんも心を打たれた79年発表の傑作シングル曲(オリジナルアルバム未収録)。メジャーコードのメロディーは素晴らしくキャッチーで、シンプル・イズ・ベスト。

 84年の日本でのライブ映像 「 Boys Don't Cry 」。ロバスミくんの小太り体型が目立ち始めたのもこの頃ですが、彼のダメ男っぷり(?)のキャラも手伝って、人気のバンドだったようです。黄色い声援が飛んでますね。

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Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me

 オリジナルは2枚組の大作 7th アルバム。全英6位、全米でも初めて50位以内(35位)にチャートインを果たし、キュアーの代表作として位置付けられるアルバムです。内容的には前作で見せたバラエティ溢れるポップ路線を押し進めたもので、#5 「 Why Can't I Be You? 」 や #10 「 Hot Hot Hot!!! 」 ではファンキーにはっちゃけた真夏のロバスミくんが飛び出す一方、ゴスの雰囲気を残したダーク系楽曲も並び、ギターロック、キーボードサウンド、民族音楽といった様々な音楽要素が彩る、まさにキュアーというバンドの魅力を凝縮した一枚と言えます。とにかく多彩。まあそれだけにまとまりには欠けるのですが、純粋に曲一つ一つを楽しめば良いのでしょう。何気にキュアーの代表曲と断言できるキラートラックが無い気もしますけど・・・。


1987年
7th アルバム
注目曲 : #1 「 The Kiss 」
 オープニングを飾る半インスト曲なんですが、すげーカッコイイ。ワウワウと悲鳴を上げるギターが印象的なダークサイケです。



1989年
8th アルバム
推薦盤
Disintegration

 キュアーはカラフルなポップバンドである、という当時定着しつつあった世間的な認識を見事に覆した 8th アルバム。ここ2〜3作品の反動ゆえか、本作ではダークサイケで閉鎖的な世界観が大復活で、悩み多きロバスミくんの内省音楽が繰り広げられております。ギター系のバンドサウンドではなくシンセサイザーの音色を中心に据え、憂鬱なマイナーコードのメロディーがほぼ全編を支配するアルバム展開。その中から浮かび上がる毒を持った花のような耽美性は、中期 Cocteau Twins にも通ずるもので、耽美系ダークサイケが好きな人にはたまらんと思います。個人的感想としましては、序盤がもったいぶった感じで微妙だが、中盤はどっぷりハマって心地よい、素晴らしい。でも終盤は「あ〜まだ続くのか」と、ちと飽きてくるんですね(笑) 我慢が足りんのか・・・。当時レコード会社も商業性を無視した内容に苦言を呈したとかいう話。しかしそんな心配をよそに、このアルバムは全英3位、全米12位、ワールドワイドで300万枚以上の大ヒットとなり、シングル曲の #4 「 Love Song 」 は米国で2位を記録。本作をキュアーの最高傑作に挙げるファンも多いです。
注目曲 : #10 「 Disintegration 」
 後に Converge もカバーした8分を超える大曲。哀愁を湛えたサウンドが美しく感動的。でも曲が盛り上がる後半部のロバスミくんはさすがに音程外し過ぎだろ(笑)

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90年代のキュアーに続く・・・