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The Sisters Of Mercy


 アンドリュー・エルドリッチ ( Andrew Eldritch ) 率いる英国のゴシック・ロック・バンド。このシーンでは後発組ながらも、アンドリューの強烈なカリスマ性ゆえ(?) 80年代半ばには、まさに「キング・オブ・ゴス」として君臨する存在になりました。が、1st アルバム発表後、アンドリューと元 Dead Or Alive のギタリストで84年にバンドに加入したウェイン・ハッセイ ( Wayne Hussey ) との間に確執が生じ、 バンドは解散。紆余曲折を経て(この件はまた別の機会に紹介します)ウェイン側は新たに The Mission を結成して大衆ロックに進むのに対し、アンドリュー側は The Sisters Of Mercy の名前でバンドを復活。『 Floodland 』 というゴスの名盤を生み出しましたが、1990年以降はまともに新作を発表することが出来ず、今日に至るまでライブだけ細々と続けるという、ゾンビのような活動ぶり。

 シスターズはアンドリューが自分でドラムを叩いていた結成当初を除いて、ドラム担当のメンバーが不在で、ドクター・アヴァランシュ ( Doktor Avalanche ) と名付けたドラムマシンをバンドのメンバーの一員として使用しています。それはいいとして、わざわざこのドラムマシン(機械)のためのファンクラブが存在するのが笑える。シスターズの公式サイトにある人生相談のコーナー(笑)では、アヴァランシュ先生が皆の悩みに答えています。うわーナンセンス。しかもそのコメントが親身さの欠片もない! オメェ笑いをとりたいだけだろ、アヴァランシュ!
 ● ドクター・アヴァランシュの相談室
 ● ドクター・アヴァランシュのバイオグラフィー

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1985年
1st アルバム
First And Last And Always

 9枚のシングルに続く、シスターズの 1st アルバム。バウハウス解散後に行き場を失ったこの手のファンの支持を集め、今でもゴスの名盤扱いされる作品ですが・・・正直クオリティは微妙では・・・。アルバム全体に不幸なオーラが充満していて、救われない気分になるのは別に構わない。ゴスだしね。しかし、どの曲をとっても釈然としない単調な暗いメロディーがだらだら続くので退屈。次作のような見せ場に欠けるのがツライっす。アヴァランシュ先生のドラム使いもつまらん。まるで機械のようにリズムを刻んでるだけです。アンドリューのボーカルはというと、低い声で何かモゴモゴ言ってるし、たまに感極まったように声を張り上げても、あんまカッコ良くないや。まあ逆に、このさえない表情で地べたを這いずり回る感じが彼らの魅力といえば魅力かも。かくも自然体で負のオーラを放出する作品は他にあまりなさそう。じゃあやっぱり名盤か? オレ的にこれは、セピア色に色褪せてしまった当時のゴス・ブームの象徴アルバム。
注目曲 : #2 「 Walk Away 」
 これは名曲。盛り上がるサビメロが良い。でも、なんだか恥ずかしいのぅ。古臭い。

Floodland

 前作リリース後、アンドリューとウェインが喧嘩別れして、ウェインは新たに The Mission を結成。結果として The Mission のデビュー作は大絶賛を受け、これはマズイ、ゴスの帝王の名が廃ると反撃のシスターズ 2nd アルバム。これを機に女性ベーシストのパトリシア・モリソン ( Patricia Morrison ) が加入しています(この人なかなかゴス・クイーンな風貌でイイですよ)。さて、喧嘩してますます自閉的になるのかと思いきや、全然違ってこれは外交的な心境変化。前作のムードを引き継いだダークな楽曲の中に、あれ? なんかディスコ受け狙いまくったポップチューンがちゃっかり紛れ込んでいるし、女性コーラスもソウルフルで楽しげ。メロディーも躍動感あり。やはり The Mission の成功が羨ましかったんですかねぇ。サウンドメイキングは以前のギター主体からシンセ主体へと移行しており、その点昨今のエレクトロ・ゴシック系の始祖としても評価できるかと。全体として表情が豊かになり、エンターテイメント性も格段にアップ。アンドリューも自ら 「 A Fine Album (優れたアルバム)」 と認める(笑)、全英9位記録のゴスの名作です。でも #5 「 This Corrosion 」 以降のアルバム後半の曲がスゲーつまらなくなるのが残念。


1987年
2nd アルバム
注目曲 : #4 「 1959 」
 ピアノオンリーの伴奏でアンドリューがじっくり歌うゴシックバラード。ある意味貴重。

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さーて、ここで 『 Floodland 』 からのシングル曲を3本続けてお楽しみ下さい。




出ました! シスターズ最大のヒット曲 「 This Corrosion 」。
前作の面影は微塵もありません、ヘイ!ヘイ!ナウ!ナウ!とか言ってて
アルバム・バージョンは10分間ノリノリ超ゴキゲン。80年代 MTV にかぶれたなオメェ(笑)
露骨に売れ線狙いですが、この開き直りは潔い。





リードトラックの 「 Dominion 」。アンドリューがヒゲ面になってるし(笑)
変な遺跡の柱からヌッと顔を出したり引っ込んだりで、これはさすがにワラッタ。
馬に乗るパトリシア嬢もカッコイイ。傑作 PV だと思います。





3曲目の 「 Lucretia My Reflection 」。今度は工場の中のアンドリュー。
ベースの反復フレーズが印象的で、雰囲気もインダストリアル的。
しかしここで疑問に思うのは、常時サングラス着用はまあいいとして、
アンドリューは何故にいつも棒を握ってるんだ!?(笑)

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1990年
3rd アルバム
Vision Thing

 メンバーチェンジを経たシスターズの3作目。古参パンクバンド Generation X の元ベーシストで、キワモノ・エレクトロ・グラム・バンド Sigue Sigue Sputnik を立ち上げた Tony James や、All About Eve を脱退したギタリスト Tim Bricheno らが新たな顔ぶれです。2nd の際に(厳密に言えば The Sisterhood 結成時に)加入したパトリシア嬢はどっか消えちゃいました(笑) なんだかビジュアル面だけの 2nd アルバム・プロモーション要員みたいな見事な使い捨てっぷり。そんなことお構いなく、我が道を進むアンドリュー先生、今度はアメリカで成功した The Cult が羨ましかったのか(?)、なんと今作では雄々しいハードロッカーに大変身です。リードトラックからいきなり 「 ビジョンスィィィング!!」とか派手に吼えてるし、ギターリフはゴリゴリだし、疾走ノリノリだし、もう普通にハードロック。じゃあ 1st の頃の面影は無くなったのかというと案外そうでもなくて、メロディーは全体的にスカッと晴れないし、アンドリューも急にテンション低くなったりと、曲によって結構温度差あり。2nd よりは硬派なイメージで面白いアルバムだと思います。しかし初期のゴシックファンにはただの迷走としか映らず・・・というか、もはやこの時期になるとゴスやらポジパンやら、そんなブームはとうの昔に過ぎ去っており、シスターズは本作を最後に音楽シーンの最前線から徐々にフェードアウトしていくのでした。じゃんじゃん♪

 ちなみにバンドを去ったパトリシア嬢ですが、94年にソロアルバムをリリースした後、96年に The Damned に加入し、ボーカルのデイヴ・ヴァニアンと結婚しました。ゴシックロックの世界は狭い(笑)
注目曲 : #5 「 When You Don't See Me 」
 1曲目 「 Vision Thing 」 が白眉といえばそうですが、この曲もお気に入り。1st の頃の暗いメロディーをハードロックサウンドに乗せた感じで、哀愁好きのツボをついてきます。