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This Mortal Coil


 耽美エント・ゴシックがお得意の英国インディレーベル「4AD」のボス Ivo Watts-Russell がお抱えのアーティストを呼び集めて、1983年に始動した音楽プロジェクト。 3枚のアルバムを発表しており、その都度 Dead Can Dance、Cocteau Twins、Colourbox といった 4AD を中心とする面々が流動的に参加しています。つまり、所謂一つのバンドではなく、コンピレーションですね。なお、"This Mortal Coil" という言葉は、シェークスピアの『ハムレット』からの引用みたいです。

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1984年
1st アルバム
It'll End In Tears

 前年の EP に続くアルバム1作目。カバー曲が半数を占め、ボーカル抜きのインストゥルメンタルも多数収録。管理人お気に入りの Cocteau Twins ボーカル、エリザベス・フレイザーは #2 と #7 でその歌声を披露しており、元 Magazine のハワード・デヴォートなんかも #3 でボーカル参加。まさに 4AD オールスターズともいえる顔ぶれが並び、ミステリアスな光に包まれたアンビエントワールドを繰り広げています。穏やかなピアノの伴奏、残響音を強調したアコースティックギター、ストリングスのハーモニー、シンセサイザーのベール。#8 や #10 でみられる宗教音楽・民族音楽風の旋律は Dead Can Dance による仕事です。コンピレーションの割には、4AD らしいオーラで統一感も十分。( #11 だけ妙に浮いてますけど・・・) 終始俗世間からかけ離れた夢の世界が描かれており、80年代的な隔世の念も感じさせないタイムレスな響き。4AD だけにゴシックの領域から語られることもありますが、その陰り具合はポジパン的なネガティブな要素とは無縁で、とにかく上品で美しいサウンドです。ジャケ絵の女性みたく静かに目を閉じて聴きたいアルバムです。
注目曲 : #2 「 Song To The Siren 」
 70年代前半に活躍し、夭折した US オルタナミュージシャン Tim Buckley の曲のカバー。Cocteau Twins のボーカル、エリザベス・フレイザーの歌声は、ひたすら美しく儚く感動的。

 「 Song To The Siren 」 のライブ映像。皆さん静かに聴いとります。
 This Mortal Coil の作品の収録曲には、日の目を見ずに消えていった70年代のアーティストからのカバー曲も多く、「歴史に埋もれるには惜しい優れた音楽を発掘・再解釈して、世に発信しよう!」 といったコンセプトもあるのかもしれません。